2022.10.02

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「生きやすいように生きた」男性の体に生まれて、女性になるまで。今、願うこと

戸籍の性別を変えられるようになってから、性別変更した人の数は1万人を超えると言われています。

しかし性別を変えるためには、必ず超えなくてはいけない高いハードルがあります。

自分らしい「性別」で生きたい、あるトランスジェンダー女性の姿を追いました。

明るいロングヘアにショートパンツ、札幌に住む、ありすさんです。

「プライベートでは大人しめにする。無口よ。声出したら絶対振り向かれるもん」

ありすさんと出会ったのは、去年12月。

このバーのスタッフとして働いています。

心は女性、身体は男性のトランスジェンダーです。

ありすさんは、両親と暮らしています。お母さんのゆみ子さんとは、大の仲良しです。

談笑しながら料理をする、ありすさんとゆみ子さん

アルバムを開き、高校生のころの写真を見せてくれました。

「高校のときは好きな男の子いたね。化粧したいとかも出てきているよね」

自分らしく生きてきたありすさん。

男性のパートナーと交際していたこともありますが、「むこうが浮気してそっちが良くなって、振られる側になった。普通に女の子に浮気されて、結婚しちゃったそのまま」と、淡々と話します。


 
ありすさんはこのとき、人生の大きな一歩を踏み出そうとしていました。

札幌医科大学附属病院は、性同一性障害の専門外来がある日本でも数少ない病院です。

ありすさんは、性別適合手術を受け、身体も戸籍も女性に変えると決めています。診察には、バーの店長も付き添います。

2度と元に戻れない手術のため、複数の医師による診断、カウンセリングを受ける必要があります。

札幌医科大学・泌尿器科学講座の舛森直哉医師は、「明らかに本人の生活の質があがるのではないかと。嫌悪感もが軽減する、望む性別で社会でも活動できるようになると、社会的にも受容される」と話します。

性同一性障害特例法は、戸籍の性別を変えるためには、精巣や卵巣などの生殖腺がないこと、または、その機能を永続的に失っていることが条件です。

このため、自分の子どもを持つことは、できなくなります。

元の性別の機能によって子どもが生まれた場合、混乱や問題が生じる可能性があることなどが、その理由です。

ありすさんは、「それはそれでいいのかな、しょうがないかなって。それ以外何で基準つけるのってなると思うから。じゃあ温泉どうなるのってなるし、スポーツジム行ったとき更衣室問題はってなると思うから」と話します。

WHOなどの国連機関は、性別変更に手術を必要とすることは「人権侵害」だとする共同声明を発表しています。国際的には、手術要件を撤廃する国が相次いでいて、日本は性別変更のハードルが高い国といえます。

入院と手術の費用は、およそ190万円。

手術当日の朝。手持ちのスマートフォンでカメラをまわし、「ドキドキが止まらない」と打ち明けた、ありすさん。

病院撮影

手術にいたるまで、3年。

病院撮影

専門医の数も少なく、この病院でも手術を受けられるのも年間10人ほどだといいます。

病院撮影

手術から9日目、ありすさんは退院の日をむかえました。

バーの店長に荷物を持ってもらい、ゆっくりと歩きながらも、カメラに手を振ってくれたありすさん。

「ただいま。痛いよねまだ、つらい」

母・ゆみ子さんは、「どうだい調子?はい、おみやげ」と袋を手渡しました。ありすさんが大好きな、スイカやブドウです。

ありすさんの兄も、様子を見にやってきました。

ありすさん「手術の前の日、知らないけど涙が勝手に出るの」
母・ゆみ子さん「泣きながら電話よこすから」

ありすさん「入院してられない。食べたいもの食べられないから」

ゆみ子さん「甘い?」
ありすさん「うん!」

手渡したフルーツを食べるありすさんの姿に、ゆみ子さんは笑みをこぼします。
「手術する前からなんとなく、女の子として接しているから、手術したからといって女の子って感じでもない。子どもには変わりない。かわいいかわいい子ども!

性別変更のためには、家庭裁判所に申し立てをする必要があり、性別を変えたい理由を書かなければいけません。

ありすさんは、当然のことのように笑いながら、言いました。

「『生きやすいように生きたらこうなっちゃった』でいいよ。超簡単じゃない?もうこうなっちゃったでいいよ、『こうなっちゃった、ビックリマーク』で!」


 
性別変更の申立書も、裁判所に提出。

裁判所前で記念撮影

手術を決断してから、3年。

2週間後、家庭裁判所から届いた、封筒。

中に入っていた紙には、この1文がありました。

「申立人の性別の取り扱いを男から女に変更する。」

ようやく戸籍に、「女」という文字が記されます。

「トランスジェンダーの女性」として生きてきた、ありすさん。


 
「そこまでまだ実感ないんだよね。だって今まで通りの生活だし。普通に暮らしていけたらいいなと思うよ。普通に、何も考えないで普通に生きられるようになればいいなって」

文:HBC報道部・泉優紀子
編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2022年9月21日)の情報に基づきます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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