2022.09.23
深めるは〜いみなさん、ごきげんよう! Sitakke連載「お悩み相談コラム」担当・満島てる子です。
無事に終わったわ……さっぽろレインボープライド2022。
燃え尽き症候群なのかしら。全身のフワッと感が半端ないわぁ。
札幌の街を虹に染め上げ、性的マイノリティの可視化をはかるこのイベント。
昨年一昨年に続いて副実行委員長を務めさせていただいたわけなのですが、なんと今年は札幌では初の2DAYS開催となりました。1日目はブースをメインとするフェス形式でお届けし、2日目は800人にも及ぶ参加者の皆さんと一緒にパレード行進。嬉しいことに、どちらもとっても盛り上がったの。
そもそも生きていくためのエネルギー低めなあたし(「エコ」だなんて程のいい単語とかつけられればいいんだけれど、それどころじゃないのよ)。
ですが毎年秋、パレードの直前期から開催日までとなると、「これだけは絶対成功させなあかん!」と、リミッター解除してブーストモードへと自動的に入っちゃうみたいなのよね。
そして、だからこそなのですが、その後の反動といったらなかなかのもの。
いつも2週間ほど「あの、起きてますか……?」と店のスタッフから言われてしまうぐらい、しばらくぽわんとした状態になっちゃうんです。
今年は運営を回す期間が1日限りではないっていうのもあってか、いつも以上にやり遂げた幸せを感じてもいるんだけれど、その分の消耗も半端ない気がするわぁ。
人間の頑張れる総量や時間って、個人差はあれど、やっぱり限界があるのでしょうね。それを痛感しました。
今回、そんな状態のあたしには結構タイムリーな内容のお手紙が来てるのよ。
なんと大阪から!北海道の情報満載のSitakkeですが、見てくれている人はもう全国規模みたい。嬉しいわぁ。
まずはどんな内容なのか、ご紹介したいと思います。
スキあらばお布団と仲良しになりたいあたしとしては「同志を見つけたわ……!」なんて思ったりするわけですが(今もこの原稿、ベッドにノーパソ持ち込んで、お布団にくるまりながら書いてるの笑)、あゆみ13さん、今回お悩み投稿してくれて、どうもありがとう!
メンタルヘルスの調子って、一旦崩れると健康を取り戻すまでかなりの時間がかかるし、ほんとしんどいものよね〜。
精神科に行ってみたことも、カウンセリングを定期的に受けていたこともある身としては、相談文から伝わってくるあゆみ13さんの焦りだったり、拭えない挫折感だったりが、人ごととはどうも思えないところがあります。
お手紙の中にも「引っ越しや結婚で環境が変わったり」と書いてくれていますが、ちょっとしたものかおおごとかを問わず、人生のイベントごとをきっかけに、こころって簡単に骨折しちゃうし、しかも一度折れた部分にその後くじき癖がつくもの(あたしにとっては「恋愛」というか、「叶わぬ望みを抱いてしまうこと」がそのウィークポイントにあたるみたい。いや知らんけど)。
しかもどこかがダメになると、ドミノ倒しで生活全般立ち行かなくなったりすんのよね。で、自分ひとりの人生すらうまく回せないことに、罪悪感抱いたりなんかしちゃって、余計病んじゃったり。
なんなら、ちょっと調子がよくなってきたかなってころに、そんな自分のマイナス像を塗り替えちゃおうって無理して、キャパオーバーを起こしてまたどん底落ちたりすんの。身に覚えがあるわぁ。
***
きっと、そんな試行錯誤を繰り返しながら、ときに適切な治療や投薬も後押しとなって、しばらくしてメンタルの霧が晴れることもるでしょう。でもそれがいつになるのかは、身体の怪我や骨折が治るのとは違って、人によって千差万別。
だから余計に「どうして私だけこんなにずっと……早くこの闇から抜け出したいのに……」と、気持ちが焦りにとらわれ先走ってしまう場合もあんのよね。やるせないもんだよねぇ。
あゆみ13さんは、きっと、そんな焦燥感のループ的なもののなかに今いるんじゃないかしら。だとしたらきっと苦しいだろうし、相当モヤモヤしているはず。
お薬を使わず自力でうつを治療したいという点などについては、専門家ではないので安易に「こうするべき」だなんて言うのは避けますが、こころの状態が最悪だった大学生の頃、同じような心情だったことをよく覚えています。色々不安だからこそ、自分の力をまず信じたくなっちゃうのよね。
そんな、経験者としては諸々共感できる状況。そして、「旦那さんのために頑張ってきたのに……もう一度そんな自分に戻りたい……」という切なさも見え隠れする文章。
今回のお手紙も、その伝わりくるメッセージに揺り動かされ、思わず「直接会ってもっと話を聞きたいなぁ」と、コラムというものの枠を飛び出していくような願望を抱いたりもしたのでした。
とはいえ、ここは7丁目のパウダールームのような直接の「しゃべり場」ではなくて、相談者さんのお悩みをもとにこちらで言葉を紡がせもらう「つづり場」。
それに、ひとつのかたちにまとまった、見返すことのできるテキストとして思いを届けるのって、その場限りのフワッとした発言で終わらせないという、一種の誠実さにもつながっているような気がするの。
だから、ここからはあゆみ13さんに向けて、あたしなりのアンサーをいつものように文字として記させてもらおうと思います。
さて、前半でも書いたように「もっと頑張らなきゃ、ちゃんと出来るようにならなきゃ」というあゆみ13さんの気持ち、よくわかります。
わかった上で、あえて言います。
頑張ろうとするのも、ちゃんとしようとするのも、全部一回やめてみてください。
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あのね、あたし思うんだけれど、本来 「頑張る」ことってそんなにいいもんじゃない はずなのよ。
だってさ、そもそも頑張るのって、このコラムの最初で言ったようにずっとできるもんじゃなくて限界があるし、それになにより、シンプルに疲れるじゃない?
そして疲れるのって、どっかこっか無理してるか、こころやからだに負担かかっている証拠。負担や無理がゼロな人生っていうのは、さすがに特殊な環境とかじゃなきゃ想定できないかもしれないけれど、でもそういう生きる力の浪費的な瞬間って、無くて済むなら無い方がマシだよね。
なのにさ、世の中では「頑張る」ことが目指すべき結果というか、それ自体が目的であるかのようになってるじゃん。これが不思議でしゃーないし、なんなら色んな人にとってしんどさの泉になっているはずだと思うんです。
そしてそれは、あゆみ13さんにとってもそうなんじゃないかしら。
「きちんと働き続けるべき」「すぐ折れちゃうのは甘え」「とにかくまず頑張ろう」e. t. c. ……社会から放たれるプレッシャー、強めだと思う。なんとなくそれが当たり前なんだって考えちゃうようにもなると思う。
でも、こうした価値観こそがきっと病巣。あたしたちからしなやかに、したたかに生きていく可能性を奪っているかもしれないんです。
だからあゆみ13さんには、理由なく美徳とされているような、そんなものたちから一旦距離を置いてみてほしいの。全然違う生き方が見えてくるはずだから。
それに、今はおそらくメンタルが弱っている状態。
だとすればなおさら、「こうしなきゃ」「あれぐらいできないと」的な思考から世界を眺めるのではなく、「自分にとって何をするのがここちよいのか」という視点から物を見て、自分のケアを優先しながら、こころ惹かれるままにおのれの行動を決めてみてもいいんじゃないかしら(ちなみにこれ、何か行動を起こすべきとかって話ではなくて、「何もしない」のがここちよいのなら、それはそれでいい気がしますよん)。
***
お出かけするもよし、趣味に耽るのもよし。一回仕事ってものを忘れて、やりたいことを好きなようにやる期間をとってみてください。逆に自分を思いっきり甘やかしてあげるんです。
こころにとって、よい充電タイムを設けること。それが今、あゆみ13さんには必要なんだと思います。
もしそんな風に過ごしているなかで、「こんな働き方してみたい」って気持ちが芽生えてきたなら、それはめっけもの。
その望みを育ててものにすることができたなら、「働かなきゃ」と焦って労働に飛びついたときよりも、仕事としてはきっと長続きするはず。
だからその時にこそ、充電した分だけで構わないから、また頑張ってみればいいんです。限りある力を、注ぐべきところに注ぐ。それが大事なことなのよ。
「あえて頑張らない、あえてちゃんとしない。」
ちょっと常識を外れるようで、もしかするとそうするのは怖いという気持ちもあったりするかもしれないけれど、ぜひこれを一回実践してみてください。きっと得られるものがあるし、こころもぐっと楽になるはずだから。
あゆみ13さんが元気になって、気持ちの霧がぱっと晴れる日が来るよう、お布団くるまり仲間なあたしとしても、遠い北の大地から祈ってます!
というわけで、今回はメンタルヘルスと仕事というテーマで、お悩み相談コラムお届けいたしました。
どんな仕事だとしても、気持ちやからだを捧げて従事する側面って消せないものよね。だからきっと、結構たくさんの人が似たような内容で悩んだことがあるんじゃないかしら。
少しでも多くの人にとって、前に歩んでいくきっかけとなっていれば嬉しいです!
そうそう、前に歩んでいく、というので思い出した。
今日の出だしでは、さっぽろレインボープライドが無事終了したことを報告させていただきました。参加してくれた皆さん、本当にありがとう!
2022年の開催は終わったけれど、札幌のLGBTQコミュニティを盛り上げるための活動は、これからも続いていきます。
なんなら、今年の実行委員会が関わっているイベント、まだ10月まで盛りだくさんあったりするのよ。
詳細は公式ホームページからぜひチェックしてほしいんだけれど、そのなかでも今回、あたしから是非ご紹介させていただきたいのがこちら!
これはね、『片袖の魚』という、トランスジェンダー当事者の役をトランスジェンダーが演じた映画の上映会なんだけれど、この作品、国際的にもかなり高く評価されているの。
10月10日(月•祝)、北海道大学にて開催。当日は主演のイシヅカユウさん、監督の東海林毅さんをゲストにトークショーも。あたしも登壇する予定だから、みんなぜひ気軽に聞きに来てね(もちろん、映画も楽しんでほしいわ)!
たくさんの人と会えるのを楽しみにしています!
ふぅぅ〜、寒くなったわね。皆様お風邪など召されませぬよう。
ではではみなさん、Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:nabe(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。)2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。
【あなたのお悩み、大募集!応募フォーム】人生、仕事、恋愛、家族、自分の性格のこと…ガチめなお悩みから、
「気分転換におすすめの映画は?」といったテーマなど、どんな悩みでもウェルカムです!!