「知る」ことで、パンはもっとおいしくなる!「パンコーディネーター」の森まゆみさんが、「パンと、パンの向こう側にある世界」を伝える連載「パンの愛し方 」。
今回は、「イングリッシュマフィン」の楽しみ方をご紹介します。
私が好きなパンのひとつに「イングリッシュマフィン」があります。
形は背の低い円筒形で、周囲にコーンミール(とうもろこしの細粒)がまぶされています。
食パンのようにシンプルで、型焼きならではのボリュームが“ムギュッ”とした食感を出して、さまざまな食材や料理との相性もよく、おやつとしても、食事としても演出できる“縁の下の力持ち”的なパンなのです。
今回は、そんなイングリッシュマフィンの魅力に迫ります。
「マフィン」はイギリスの伝統的な堅焼きパンです。
その語源は、昔、手を温める防寒具の「マフ」が由来で、このパンを持ってかじかんだ手を温めたことから、そう呼ばれるようになったそうです。イギリスでは、そのまま「マフィン」と呼ばれていますが、日本では焼き菓子のマフィンと区別するために「イングリッシュマフィン」と呼んでいます。
一般的な原材料は、小麦粉、砂糖、塩、パン酵母、水、脱脂粉乳、コーンミール。水を多く配合してよく練るのが製法の特徴です。オーブンに入れる際、天板などを上にのせることで、膨らまずに平らに焼き上がるようにしています。
さらに、食べる直前にトーストすることを前提にしているので、ベーカー(パンを焼く人)が、オーブンで焼くときは完全に火を通さず、8割ほどの加熱に抑えます。周囲にコーンミールをまぶすのは、発酵した生地が天板にくっつくのを避けるための工夫でしたが、焼き上がった時に香ばしさを出すという役割も果たしています。
イングリッシュマフィンの魅力はトーストして食べることです。
もちろん、そのままでもおいしく食べられますが、焼くことで本来のその味わいに辿り着くのです。
① まずは、フォークを用意してください。イングリッシュマフィンの真横からフォークで突き刺しながらザクザクと一周します。
② 手で上下にはがすように二つに割ります。
③ 割った面を上にしてオーブントースターでこんがり焼きます。このとき、生地の水分を逃がさないよう、高温で短時間に焼くのがポイントです。
ナイフで切らずにフォークで割るのは、表面が平らではなくギザギザしているため、焦げ目が部分的に立ち上がってカリッとするため。これはスタンダードな方法です。
バターを塗ってから焼く場合は、溶けたときにギザギザの部分にバターが留まるので、そこもおいしいポイントになるのです。
少しの手間を惜しまず加えて、イングリッシュマフィンの魅力を引き出すのは、私たち食べ手の腕の見せどころですね。
シンプルだからこそ、アレンジも自由自在なのが2つめの魅力です。
果物やハチミツ、生クリームなどを合わせてデザートとして仕上げるのもよし、野菜や肉、卵を合わせて食事のメニューとしても活躍します。
写真は、「アスパラとチーズ」。
とろけるチーズをのせて焼いたイングリッシュマフィンに茹でたアスパラをのせて、マヨネーズを添えます。アスパラが旬の今だからこそ、アスパラの甘みとチーズの塩けがおいしいアレンジです。
バターを塗って焼いたイングリッシュマフィンに、焼いたベーコン&目玉焼きをのせました。
いつもは食パンで食べているメニューも、たまにはイングリッシュマフィンで試してみてもいいですね。
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文:パンコーディネーター・森まゆみ
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