2022.05.21
深める2021年12月27日。次の取材はいよいよ年明けの出産だなと思いながら、わたしは年末の休暇を友人とカフェで過ごしていました。
「年が明けたら、安産祈願の初詣に行くのはどうかな?」「生まれた瞬間の撮影も病院に頼まなくちゃ……!」幸せな取材計画に、心が躍るような思いでした。
そのとき携帯電話が光りました。ちかさんからのメッセージでした。
「こんにちは。今日の健診で赤ちゃんの心臓が止まってました。急遽ですが、今日から入院します」
心臓が止まっていても、まだ動く可能性はあるのか、詳しく検査をしたら、動いていたという可能性もあるのか…突然の知らせに、息が詰まり、店の中のコーヒーとタバコの匂いで急にむせ返るように感じました。
すぐに店を出て電話をかけると、ちかさんは落ち着いた様子で、「これからきみちゃんに付き添って病院に泊まる」「きみちゃんは大丈夫です」などと伝えてくれました。
赤ちゃんは、亡くなったということ…?
はっきり聞けないまま、わたしは電話を切りました。妊娠・出産は、命を宿した本人も、赤ちゃんも命懸けだということを忘れてしまっていた自分に、気が付きました。
翌日、きみちゃんはちかさんが立ち会う中で、羅希ちゃんを死産しました。羅希ちゃんの産声は、誰も聞くことができませんでした。
出産してすぐ、きみちゃんは、ちかさんとわたしとのグループメッセージで、羅希ちゃんを抱っこする2人の写真を8枚共有してくれました。白い産着を身につけ、ピンクの毛布に包まれた羅希ちゃんは、どの写真でも同じ顔をしていたけれど、すやすやと寝息が聞こえてきそうな安らかな表情でした。
担当の医師によると、「原因は不明」だといいます。「死産は1パーセントほどの確率で起こり、決して珍しいことではない」「原因がわからないことも多い」と話していました。
■こころが男性どうしのふうふと、新しい命を見つめた連載「忘れないよ、ありがとう」