は〜い皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。
新年度が始まってはや1ヶ月が経ちましたが、皆様いかがお過ごしなのかしら?SNSには職場や学校について「新しい出会いがあって……」なんて書き込みがちらほら。営業を再開した7丁目のパウダールームにも、「今夜は歓迎会なの!」「この4月に知り合ったんです」なんて方々がお越しになったりもしています。
新しいめぐり合わせがあれば、新しい気持ちが芽生えたりもするもの。中にはときめきを覚えたりすることもあるでしょう。でも、自分の気持ちのうごめきって、ときにくすぐったくって、なんだか苦しくて、なんならそれ自体怖いとまで感じたりするものなのよね。
今回いただいた投稿文には、そんな複雑な感情がありありと表れているように思います。見てみましょう。
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「ファンです」というメッセージをいただいたことに、少し照れもありますが……。笑 まずは、お手紙ありがとうございます!お茶のおともにしては、どっちかって言うとちょっと変わり種なお菓子……そうね、例えば「そばぼうろ」的なものかもしれないけれど(あたしすんごい好きなの)。これからも書き続ける限り、みなさんに少しでも「ほっこり」な気持ちや、「じんわり」な心持ちを届けられればと思っています。こういうお手紙、励みになるわ〜!
さて、自分の文筆活動へのスタンス表明なんてものは、そこそこにするとして。相談者さん、なかなか手ひどい振られ方をしたのね……。読んでて「嘘でしょひどくない?」って思わず声出ちゃったわよ。
てかさ、そのかつての片想いのお相手さんの言ってること、なかなか向こうっ気強めよね。「今までも色んな人に告白されてきた」ってセリフは、相当のモテ経験と自信(ちょっとおごりに近いような気も)が無いと出てこないはずだし、「勝手に好意を持たれても困る」という発言からは、相談者さんの気持ちを突き飛ばすかのような威圧感が見て取れます。きっと当時はかなり傷ついたんじゃないかな。大変でしたよね。
恋愛で弱いポジションに立たされるのは、どこまでいっても追う側・想いを告げる側。それはパワーバランス上、仕方のないことかもしれません。だとしても、追われる側にも節度だったり、相手への思いやりのようなものはあってしかるべき。
そんな風に思うあたしからすると、割と今回の同級生さんに対しては、「有罪判決!」とまではいかなくとも「異議あり!」という感情が湧いてきて、花粉症時期の鼻かのごとく、心のはしっこがむずむずするのでした(あたしちっちゃいころからスギ花粉アレルギーなの。え?今関係ないだろって?許して!笑)。
あと、むずむずという感覚で言うと、「自分の好意が相手にとって足枷になってしまう」のが怖いという気持ちだったり、「自分が傷つきたくない自己防衛」ってところ、痛いほどよくわかってこそばゆくなってしまうというか。今でもそんなところがあるのですが、ゲイであることをまだ誰にも打ち明けられなかった頃のあたしは特に、同じような苦しい心情でいっぱいだったんです。
例えば、近くにいる男友達に気持ち惹かれることがあったとしても、即座に「いやこれはまやかしだ。打ち明けたとして相手の負担にもなってしまうし、その後周りからもどんな目で見られるかわからない。」と、想いそのものを心の奥の方に、みずからぐいぐい押し込めて隠してみたり。胸の内をスマートに、そしてストレートにさらけ出せないのが辛かったなぁ……。
そんな個人的な経験もあいまって、いただいた投稿文をなんだか他人事としては受け止めることができず。「このモヤモヤと、どう付き合っていったらよいでしょうか」と聞いてくれる相談者さんに対しては、「いやそう、モヤモヤするのよね……あたしもずっと悩んできてさぁ……」と、なんなら自分の話も聞いてもらいつつ(ずうずうしいかしら笑)、お互いのことを語り合いたくなってしまうぐらい、親近感を抱いたのでした。
とはいえ、ここはWeb上のお悩み相談コーナー。リアルとは違って、「この後〇〇カフェに〇〇時集合ね!しゃべくりましょ!」とはいかないのよね。笑 なので、ここからはあたしなりに言葉を尽くして、相談者さんに伝えられることを記していきたいと思います。
率直に言うと「心のブレーキ」そのものについては、ちっとも悪いことじゃないです。むしろこと恋愛においては、それぞれそうなってしまう理由やバックグラウンドは様々だったとしても、とっても自然に起こる現象なんだということを、あたしは自分自信の経験や(さっきも書いたようにとっても苦しかったけれど)、他の人との交流から知りました。
傷つくのが怖いというセルフディフェンスや、相手の重荷になってやしないかという心遣い。そのスケールだったり、どの程度の抑制具合なのかは、人によって差が出てくるかもしれないけれど(あたしや相談者さんは大きくて強めの方なのかもしれません)、何がしかのロマンスに遭遇した人たちと語らうたびに、「あ〜、多かれ少なかれ、割とみんなそういうたぐいの気持ちの渦に足を踏み入れて、そのせいで迷いを感じたりしているのね」なんて思うんです。
だから、相談者さんは「優しいものではないんじゃないか」と、ブレーキをかけてしまうことに、少し抵抗感があるようだったけれど。それはエゴイスティックなものではなくて「それで当たり前」だということを、まず伝えておきたかったの。
その上で、です。誰かを素敵な人だなと思いながらぐっと踏みとどまってしまう、そんな自分にモヤモヤを感じる相談者さん。あなたには、ぜひ自ら、自分の心の根っこの部分をそっとのぞいてみて、そこにどんな気持ちが転がっているのか、モヤモヤの大もとがどこにあるのか、ゆったり観察してみてほしいのよね。
というのも、今回の投稿をいただいたとき、真っ先に「人を好きになることに自信が持てない」って書いてくれている部分について、あたし不思議だなって思ったのよ。そういう趣旨ではなかったらごめんなんだけれど、なんだか相談者さんが「人を好きになるためには自信がなきゃいけない」って考えているように、自分には響いたのよね。そんな密やかな前提が、この部分にはありそうって感じたというか。
なんだけれど……。人が誰かを好きになるのって、自分に自信があって初めて恋に落ちるのかと言うと、愛の女神ビーナスはそんなのお構いなしで、キューピッドに「あいつとこいつよ!やっちまいな!」と、もはや事故みたいなノリで矢を放たせるもの。
つまりロマンスは、自分の状況や状態、メンタルの持ちように関わりなく、電撃みたいに勝手にやってきちゃうパターンが多くて、自信があろうとなかろうと、ときめく人はときめいちゃうし、ときめかない人はときめかない。そんなシンプルなものな気がするんです(そのせいでめっちゃ苦労してるわ、あたし……苦笑)。
だから、この「人を好きになることへの自信」って部分に、あたしはひっかかりを覚えたし、ここになにか相談者さんにとっての”しこり”のようなものがあるんじゃないかと思ったの。例えば、もしかしたら相談者さんは、気持ちのブレーキをかけるような場面にたどりつく以前に、過去の告白事件もあいまって、「こんな自分が誰かを好きになるなんて」と、心のずっと深いところでそもそもの自信を無くしているんじゃないか、とかね。
だとしたら、それはそれで自分に対するケアが必須だと思うし、それを最初にしてあげられるのは、やっぱり相談者さん自身。おのれの意識の奥底へとゆったり時間があるときに、それとなくで構わないので目を向けてみると、たくさん気づくことがあるんじゃないかしら。そんな風に思うんです。
もしそこで「あたしなんかに恋は無理」という、自信を育てるというか、自分らしく己の感情と向き合うことをはばむような、気持ちの”しこり”を見つけて困ったなら、またいつでもお手紙ください。そこにメスを入れる方法ぜひ一緒に考えたいし、その時はきっとここに書くわね。
これからも、ときめきに対して「やだっ!怖いの!」とブレーキをかけがちなままのあたしたちかもしれないけれど。笑
そんな自分も愛しいとくすっと笑ってあげながら、素敵な出会いがきたときにはそれぞれ素直になれるよう、おのれの気持ちをときほぐしていくきっかけとなるような、心の”ダイビング” を、ぜひ相談者さんもやってみてください。あたしも、ゆったり心に潜って自分のこと考え直す時間、近々取ってみようかな。
この投稿をきっかけに、相談者さんのモヤモヤが「ふわふわ」ぐらいになってくれたならと、そう願っています!
今回はなんだか「恋に向かう気持ちの整え方」みたいな話になったわね〜。みなさん、いかがだったでしょうか。特に、春風とともにくすぐったい想いを抱えてるなんて人!もし少しでも参考になっていたなら幸いです。
あたしにも、いい春のたより来ないもんかしらね。ちょろっとしたドキドキで全然いいんだけど、どうして冬枯れみたいなエピソードばかりが増えていくのか……。この季節の思い出といえば、腐れ縁の殿方と会うって日の朝に財布を落として、絶望的な顔で昼間、近所の歩道漁ってた記憶ぐらいしかない……。
あ!そうそう「たより」で思い出しました!
あたしが副実行委員長をしている「さっぽろレインボープライド」なのですが、今年2022年も開催に向けて準備中。先日、北海道内はもちろん、全国に向けて第1段フライヤーを発送させていただきました!
具体的な日付は、近日公式ホームページやツイッター、インスタグラムなどで発表予定ですが、例年同様どこかの秋の連休で、なぁんて計画しています。クラウドファンディングなんかも今後はじめるので、皆さんどうか応援いただけると。よろしくお願いいたしますね!
だんだんと北海道もあったかくなってきましたね。出会いを探しに、どこかへお出かけとかあたしも計画してみようかなぁ。ではでは皆さん、Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:なべ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。