2022.03.10
食べる「知る」ことで、パンはもっとおいしくなる!「パンコーディネーター」の森まゆみさんが、「パンと、パンの向こう側にある世界」を伝える連載「パンの愛し方 」。
今回は、パンのおいしさを引き立てる、「北海道のチーズの合わせ方」をご紹介します。
パンはそのままでもおいしいけれど、特にシンプルなパンは、バターやジャムはもちろん、肉や魚料理との相性もいいですね。個性的なパンも、それだけで主張するよりも、意外な発見に出会えるかもしれません。
パンと「何か」を合わせることで、パンの持ち味を生かして、食材との「おいしい相乗効果 」を生み出します。
また、食品に含まれる「タンパク質の量」と「必須アミノ酸」のバランスを表す「アミノ酸スコア」を見ると、パンに不足している栄養素を、チーズと一緒に食べることで、大きくカバーして、完全栄養食としての役割を果たします。
今回は、おいしい上に栄養バランスもgoodな、パンと北海道チーズの組み合わせをご紹介します。
フランスパンの代表格と知られる「バゲット」は、フランス語で杖を意味します。フランスでは「パントラディショネル」として知られる、小麦粉・水・塩・酵母というシンプルな材料で作られたパンのひとつです。
バゲットは細長い形状から、基本的には外皮(クラスト)の部分が多く、中身(クラム)が少ないので、皮の香ばしさやしっかりした食感を感じられます。
食べる際の切り方でも、厚さなどによって、クラストとクラムのバランスが変化して、その印象は変わります。
バゲットを横から水平に切れ目を入れて内側にバターを塗り、ハムを挟んだだけのバゲットサンドを「ジャンボン・ブール」と言います。
ジャンボン・ブールにチーズを加えたのが「ジャンボン・フロマージュ」。塩気はチーズとハムに任せて、この時に塗るバターは無塩バターが私流です。
写真で合わせたチーズは、長坂牧場チーズ工房(標茶町)の長期熟成チーズ「みのり」 。チーズの香りとコクの旨みを加えて贅沢なごちそうサンドになります。
青カビタイプは、チーズの内部に青カビ菌を植え付けて熟成させ、菌が乳脂肪を分解することで独特の香りと風味を醸し出します。ピリッとした刺激としっかりとした塩味が感じられる力強い味わいが特徴です。いくつかの種類を総称して、ブルーチーズと呼ばれます。
写真はさらべつチーズ工房(更別)の「きまぐれブルー」。しっかり感じる塩味の後に青カビ特有の風味があり、キレのいい後味が魅力です。
その個性的なブルーチーズに合わせるパンは、甘味を感じるドライフルーツ入りのパン。
ブーランジェリーラフィ(富良野)の「ズ・フリュイ」 は、小麦粉に雑穀・かぼちゃの種・くるみ・栗を混ぜた生地に、イチジク・クランベリー・オレンジのドライフルーツを巻き込んで焼いた、素朴な生地にフルーティーな味が加わっています。
ガツンとくるチーズの個性とドライフルーツの甘味のコントラストで、新たな味わいを演出します。
ラクレットチーズはスイス発祥で、スイス料理「ラクレット」に使われます。ハードタイプの一種です。
代表的な食べ方は、ラクレットオーブンと呼ばれる専用器具に取り付けたチーズの表面を炙って、溶けた部分をすくい取ってジャガイモにのせて食べます。
写真は、フライパンの上に器状にしたアルミホイルを置き、そこに刻んだ 川瀬チーズ工房(長万部)の「長万部ラクレット」 を入れて弱火で溶かし、トーストしたPascoのイングリッシュマフィンの上にのせました。
チーズの香りと塩気が引き立ち、シンプルなイングリッシュマフィンと抜群の相性です。黒コショウをかけてピリッとしたアクセントをプラス。
おいしいものの組み合わせは味わい以外に食感も大事な要素です。
とろっと溶けたラクレットチーズに、クラスト(外皮)がカリっと、クラム(中身)はむっちりした食感のイングリッシュマフィンの組み合わせが、統一感ある魅力を発揮します。
熟成させないフレッシュタイプチーズの一種に、モッツアレラチーズがあります。他のチーズよりも水分を多く含み、牛乳本来の風味や酸味があるのが特徴です。マイルドでクセがないタイプなので、アレンジを利かせたバリエーションも豊富です。
べこちちファクトリー(天塩町)の「味噌モッツアレラ」 は、留萌管内の手造り味噌をまとわせて、おつまみとしてもお料理にも合う味の仕上げをしています。
合わせたパンは、風土火水(帯広)の「柏」。有機栽培で石臼挽きの小麦全粒粉(60%)とライ麦全粒粉(40%)を配合した粉で作った生地を、有機小麦粉から起こした「ルヴァン種」と有機ライ麦粉から起こした「サワー種」を混合した酵母で発酵させた、ドイツの「ヴァイツェンミッシュブロート」という伝統的なパンです。
ややクセのある風味と味わいのパンに、味噌モッツアレラのコクや甘味が相まって、ひとつの料理になったような一品になります。
実際に食べるときは、口に運びやすいようにチーズをスライスしてパンにのせました。
パン・ド・カンパーニュは、粉(小麦粉×ライ麦粉)・水・塩・酵母・モルトを材料に焼いた大型の食事用のパンで、パリ郊外で焼いていたことから「田舎パン」の意味を持ちます。一般的にはカンパーニュと呼びます。
素朴で飾り気がないからこそ、穀物の味や風味をダイレクトに感じます。バゲットと同様にシンプルですが、より食材との相性がいいのも特徴です。
クリームチーズは、生クリームかクリームと牛乳を混ぜて乳酸発酵させて(ホエイを取り除き)作った、非熟成の軟質チーズです。その名の通りクリーミーなやさしい味わいが特徴です。「塗る」「混ぜる」がこのチーズの使命ですね。
カンパーニュにクリームチーズをたっぷり塗って、さらにハチミツをかけるというのはスタンダードな食べ方です。アーモンド・くるみ・ヘーゼルナッツ・ピスタチオをハチミツに漬けたハニーナッツを合わせると、たちまち贅沢なデザートパンが誕生します。
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(Sitakke編集部追記)
おいしいパンを、北海道のチーズがよりおいしくさせる…。ぜひ試してみてくださいね。
パンコーディネーター・森まゆみさん連載「パンの愛し方」
連載を記念したインタビュー記事はこちらから!↓
・パンの世界にのめり込むうち、自分の世界が広がった・・・プロに聞いた「パンがよりおいしくなる」秘訣 https://sitakke.jp/post/2552/
文中でご紹介した、ブーランジェリーラフィさんについては、こちらのインタビュー記事でもご紹介しています。
・薪窯パン職人、出合さんの生き方。〈Boulangerie Lafi〉 https://sitakke.jp/post/1849/
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文:パンコーディネーター・森まゆみ
編集:Sitakke編集部IKU