2022.01.27
深めるは〜い皆さん、ごきげんよう。札幌でちょこまかといろんなことをしている女装子のゲイ、満島てる子と申します。
最近朝起き上がろうとするたびに寒すぎて。「誰か起こしてくれる素敵なダーリンがいたらなぁ…。優しい人だから、きっとあったかいスープ持ってきて『起きなよ〜、ほらこれ飲む?』なんて言ってくれるでしょ、そんでそっから……」なんて無駄に妄想がはかどる日々なのですが、そんなファンタジー脳を暴走させているその間、まぁシングルベットの上でババくさい柄の極厚毛布にくるまってヒィヒィ凍えるのが関の山。
やぁねぇ。そろそろ新しい王子様でも現れないかしらなんて思いつつ、そう簡単にはいかないのがこの世の中。重々承知してはいるのよ……。涙
そんなことを自分自身に言い聞かせがちな昨今なのですが、今回は久しぶりに恋愛に関する投稿が来ているようなんです。しかも似たような内容で2通も!早速紹介させてください。
「2年近く報われない恋をしています……。どうすればいいのでしょうか。報われない恋だなと思ったときはどうしてますか?(北海道・S市・〜19歳)」 「好きになってはいけない立場の人を好きになってしまいました。この気持ちは伝えずに密かに思っていた方がいいですか?(北海道・S市・30〜34歳)」
やぁ!切なくてどうしようもない想いに身を焦がしている両名! 報われない恋に関してはプロフェッショナル(自称) のあたしがお相手いたそう!
……と、突然威勢よく始まりましたが。笑
二人とも、それぞれの事情の違いっていうのはあると思うんだけれど、それにしてもしんどい状況に身を置くことになってしまったのね。
恋する相手は選べないもんだけれど……うん、まずはドンマイ……。
相手から振り向かれる可能性が薄かったり、振り向くようにこちらからアプローチし難い恋愛ってさ、割と常時、何ならときめいたりする瞬間すらしんどかったりしますよね。
しかも「これは恋してはいけない相手を選んでいる自分が悪いんだ、自分に落ち度があるんだ」と、ともすればおのれを責めることになりがち(それが秘めた心をますます焚きつけるスパイスになってしまっている、盲目の恋パターンも見かけたりしますが)。
事実あたしは、例えば学生時代にストレートの男性のことを好きになった結果「どうしてあたしはゲイなんかに生まれてしまったのよ!」と、自らの身の上のことを号泣しながら呪ったりしたことがあります。あの頃は毎日が辛かったなぁ。
別のパターンで言うと、これは割としょうもないエピソードですが、ある日「大事な人がいるんだ」とうすうす気づいていた事実を相手からはっきり、しかも直接告げられたことで、「自分なんか消えちまえ!よし消えよう!」とその場で錯乱してしまい、気がつくとその時目の前に広がっていた豊平川にパンツ一丁で飛び込んでいたこともありました(向こうさん爆笑してたわ)。
みんながみんな、川にダイブみたいな行動をとるとは思わないけれど。笑 でも、それぐらいの勢いで自分自身を傷つけてしまう瞬間も、意識的なものであれ無意識的なものであれ、もしかしたらあるかもしれない。「今回投稿してくださったお二人は、恋が原因で大変なことになってないかしら、大丈夫かな」と、こちらの相談文たちを読んだ時に思ったのはそんな心配でした。
さて、この流れでいくと「報われぬ恋、諦めた方がいいのか?」という話題に向かうのが、お悩み相談の流れとしては自然なのかもしれないと、参考のためにいろんなサイトの記事を見て思ったりしたんだけれど……
あたし個人の意見ですが、どんな恋であれそれが本気なんだとしたら、その想いに区切りを付けるかどうかは、やっぱり恋をしている本人が本人だけのタイミングで決められること。だから、もしかしたら逆に酷な態度なのかもしれませんが、お二人がどんなシチュエーションにいたとしても「そんな気持ちは捨てちまいな」と言うつもりは一切ありません。
むしろ。もしそれが一時的な情念とか、単なる気の迷いではないと言い切れるのならばですが……。一度巡り合った縁です。その恋にあえて全力を注いでみてほしい。
そして、うまくいったならそれでよし、やはり報われれないのなら、その時は一旦しっかりと玉砕して、ひとつの区切りを付けるのがいいんじゃないかと思うんです。
(ちなみに、「それでも好き!」となるのなら、玉砕後もその人を追い続けていいとあたしは思います。いつか思いが届くかもしれないし、そうしているうちに別の出会いがあったり、はたまた恋が愛へと変わっていくというか、自分の中でそんな気持ちの深まりがあったりするかもしれません。)
単なる恋だって難しいところがあるのに、ましてや「報われない恋」という名前を付けたくなるような状況なのであれば、その過程の辛さを想像したり、場合によっては相手の立場上の問題を考えたりして、躊躇してしまう部分も大いにあるでしょう。あたしにも身に覚えがあります。
けれど、前半でも近いことを書きましたが、相手へのアプローチを我慢するあまり自らを苦しめるようなことになってしまう方が、きっともっと悲惨。ならいっそ、好きという感情を「好き」として正面から自分のものとして迎え入れ、その相手に届けられるように精一杯努力してもがいてみるという、そんな青臭いベクトルに乗ってみてはどうでしょうか?
とはいえ、恋はひとりではできないもの。箸にも棒にも引っかからずに終わることもありえるし、相手から返答がもらえたとして「やっぱり”ごめんなさい”だったかぁ……」とショックを受ける結果になるパターンもあるかもしれません。辛いよね。そんなときは、またぜひ教えて下さい。あたしったらば 失恋の傷の癒やし方についてなら、叶わぬ恋以上にプロフェッショナル(もちろん自称) だったりするのよん。
実るか否かに関係なく、二人の恋路がそれぞれ素敵なものとなるよう、ラブを追い続けるひとりの同志としても、画面の向こうから応援していますね!
てなわけで、今回はちょっとほろ苦い自分の思い出も振り返りながら、切ないお悩み相談にあたしなりのお答えをさせていただきました。
しっかし懐かしいわねぇ〜、大学時代は恋のせいでよくてんやわんやになったりしたのよ。学部4年生のときなんてもう特にひどくってね。べろ酔いの状態で「男なんて‼男なんて〜〜〜‼‼」と大絶叫しながら、6階建ての校舎をすみずみまで爆走して、研究室の先輩たちにとんでもない迷惑をかけたりしたなぁ……(当時、周りの人にあまりまだカミングアウトしてなかったので、「なんであんなこと言ってたの?」という質問に後日冷や汗をかきました)。
嗚呼恥ずかしっ!笑
これからもあたしはあたしなりに、恋やら愛やらやっていきたいもんだわぁ。
ではでは皆さん、Sitakkeね〜!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:なべ子(Sitakke編集部)
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。) 2021年7月よりWEBマガジン「SItakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。