2022.01.21

暮らす

また起きてもおかしくない…住宅街へのクマ出没、どう防ぐ?【じぶんごとニュース】

2022年、事件事故にあわない1年を送るために知っておきたいことを、去年の重大ニュースから考えます。

去年6月、全国を驚かせた「札幌市東区でのクマの出没」のニュース。実は、私Sitakke編集部IKUは、当時現場にいました。

現場から見えた、同じ被害を繰り返さないために必要な変化を振り返ります。

去年6月18日、札幌市東区の住宅街にクマが出没しました。HBC報道部に一報が届いたのは、午前4時ごろです。

当直勤務中だった大内孝哉(おおうち・たかや)カメラマンは、「クマが出たという住所が札幌の中心部で、とても信じられなくて、最初は誤報じゃないかと思った」と振り返ります。

出動からおよそ2時間…。取材車の助手席から周囲を見渡していた大内カメラマンは、クマの姿を捉えました。地下鉄の駅もほど近い、大型商業施設の周囲を、クマが走り抜けていったのです。

私は当時報道部の記者で、大内カメラマンと同じ車内の後部座席にいました。入社以来3年間、クマを主軸に取材活動をしていて、クマについての報道で一番大切なことは、「命を守るためにやっていると忘れないようにすること」だと考えてきました。

入社した年、後志の島牧村のクマ騒動を取材(2018年撮影)

取材陣の行動によって、クマを興奮させたり、それが周りの人の被害につながってしまったりすることもありえます。大内カメラマンは車内からの撮影を基本にし、用水路を見下ろすときも足は車のドアに入れたままにするなど、クマの様子や距離を冷静に見ながら、安全確保を大切にしていました。「人の身に危険が迫っているとき、一度冷静になって考え直すことが大事で、一番いい映像を撮ることがすべてではないと実感した」といいます。

車内の緊迫した雰囲気とは違って、まちにはゴミ出しをするなど、日常と変わらない人々の姿がありました。クマが出没したのは、通勤や通学の時間帯でした。

パトカーがクマの出没をアナウンスしながら走っていましたが、まちを歩く人たちには聞こえていないようでした。慌ただしい朝、住宅街に反響して聞き取りづらくなった音声は、「まさかここにクマが出るはずがない」という思いにかき消されていたように感じます。

車通りの多い道路をクマが横切っていった

映像には、大内カメラマンが叫ぶ声が残っています。
「お母さん逃げて逃げて、いたいたクマ、逃げて!」「お父さん逃げて!」「クマいるよ、クマ!」

大内カメラマンは、「クマの姿を撮影するのが最優先と思っていたが、情報が少ない住民に声をかけながらカメラを回し続けようと決めた」と振り返ります。歩く人を見かけるたびに、ふたりで車内から直接「クマがいる、家から出ないほうがいい」と呼びかけ続けると、人々は「えっ」と驚きながら家の中に戻ってくれました。

しかし、直接声が届く人はごくわずかです。取材車が進んだ先には、人が倒れていました。起き上がれない様子で、警察官が駆け寄っていきます。

男女4人が重軽傷を負いました。そのうちの一人は、「ふっとみたら、後ろにクマが走ってきているんですよ。襲いかかってきて、もう、その間の記憶ない」と話します。

クマによる攻撃を振り返る女性

クマは住宅街から逃げるように、茂みに入っていきました。周囲を警察が取り囲み、札幌市の要請を受けて出動したハンターが近づいていきます。

最初の目撃から、およそ8時間が経った午前11時すぎ。クマが茂みから飛び出すと、ハンターが追いかけていきます。

銃声が響きました。

体長161センチ、4歳のオスでした。専門家によりますと、クマは、数十キロ離れた増毛山地から水路をたどって、札幌市までやってきた可能性が高いと考えられています。

当日は「燃えるゴミ」の日でした。「ゴミを狙って人を襲ったのか?」という可能性も考えましたが、取材を続けると、クマの胃の中は「サクランボや魚の骨しかなく、ほとんど空だった」ということがわかりました。山や川で食べられるものの残骸だけで、ゴミを食べた形跡はなかったのです。

クマは「人を襲いたい」と思ってやってきたのではなく、住宅街に迷い込んでパニックになり、走る道中でバッタリ出会った人を襲ったとみられています。

なぜ、クマは迷い込んでしまったのか。

酪農学園大学・佐藤喜和教授

酪農学園大学の佐藤喜和教授は、「クマは自分の体を見せることを嫌うので、体が隠れるような、“やぶ”とか茂みの中を基本的には好む。クマの生息している森林から、水路、河畔林が住宅地まで連続的に繋がっているというのが問題」と指摘します。

背の高い草が茂るところに向かっていった

近年、クマの個体数は増加していて、札幌市内の山林では、少なくとも31頭が確認されています。道内での人への被害も、過去最多を更新。牛や飼い犬が襲われる被害も相次ぎました。

佐藤教授は、「人間の社会も変化していますし、クマの数も変化している、クマが市街地の中まで出てきやすいような条件が整っている。クマが身近にいることを前提とした暮らしが必要な時代になった」と話します。

人もクマも傷つかず、暮らす場所の境界線を保って共存するには…。現場にいた記者として感じたことがあります。

クマの最初の目撃から、最初のけが人がでるまで、3~4時間が経っていました。どうして、その間に防げなかったのか。それは私たち報道が伝える力が足りなかったからだと思って反省しています。クマについてもっと日常的に伝えていれば、道民の意識も変わっていたのでは…と悔やまれます。

その想いから、今は Sitakkeで、クマの記事を書いています。「 クマに会ったときにしてはいけないこと」や、「 クマの攻撃を受け大けがをした男性からの教訓」、ときには、「 クマ対策を極めるために夫と500キロ以上離れて暮らす女性の生き方」について。

今年も、何かあったときだけでなく、継続的にクマにまつわる情報をお伝えしていきます。目にしたときは、「うちの近くにはクマの通り道になるような茂みはないか?」「どんな対策がいいか?」…などなど、「クマが身近にいることを前提とした暮らし」を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

連載過去記事一覧:じぶんごとニュース

文:HBC報道部・Sitakke編集部IKU

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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