
春のごくわずか一瞬、利尻島の海は、不思議な乳白色へと姿を変えます。
これは「群来(くき)」と呼ばれる、ニシンの大群による産卵現象。
北海道の日本海側で古くから知られてきた、春の訪れを告げる北の海の風物詩です。
産卵のため沿岸へ押し寄せたのは、ニシン。
群来の白い色は、産卵のため集まったニシンたちが放つ白子によるものです。
海藻に産みつけられた無数の卵を包み込むように、海そのものが命のゆりかごへと変わっていきます。
自然が生み出したとは思えないほど幻想的な光景が、島の海辺を包み込みます。
その背景にそびえるのは、標高1721メートル、日本百名山にも数えられる利尻山。
「利尻富士」とも呼ばれる美しい独立峰は、春になってもなお深い雪をまとい、白く染まった海と響き合うように圧倒的な存在感を放っています。
群来は、ただ美しいだけの現象ではありません。
そこには、厳しい北の海で命をつないできたニシンたちの営みがあります。
かつて北海道の暮らしと文化を支えた豊かな海。
その記憶を受け継ぐように、利尻の春は、今年も静かに海を白く染めていきます。
空から眺めると、白濁した海と雪の山、そして小さな漁村の風景がひとつにつながり、この島そのものが、大きな生命の循環の中にあることを感じさせてくれます。
北の果てで出会う、ほんの短い季節だけの「白い海の奇跡」です。
2026年5月17日「北海道ドローン紀行」にて放送
・撮影:松前 雅浩 さん(利尻富士町 在住)
・音楽:HBCジュニアオーケストラ
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