2025.12.27
育む
まずは「ひとりで雪玉作ってたの?」と聞いてみました。
「学校から外に出たらたくさん雪があったから、大きな雪だるまを作りながら家に帰ろうと思ってた。家に着いたらママに見せてびっくりさせようって考えてた。でも思ったより時間がかかっちゃった」
こうちゃんの答えはとてもしっかりしたものでした。
そして、「新しい手袋があったかかったから、つい作りたくなっちゃったんだよ、ごめんね」と。

なるほど。前日に買ったおろしたての手袋がこうちゃんの制作意欲をさらに後押ししたんだね。
「寒くない?雪だるま、作りたくなるよね。でもね…」
たくさん言葉にして伝えてくれたあと、私もゆっくり話しました。
「約束の時間になっても帰ってこないと心配になっちゃうから、できれば今度からは一旦家に帰ってきてから雪だるま、作りにいこうね」
「分かったよ。ママ、雪だるま見たかった?見たかったよね?今度また作ってあげるね」
帰り道。こうちゃんはまだまだ話してくれます。
「あのね~!おじさんにね、『上手だね!がんばれ!』って言われたんだよ!!」
聞きながら、私は少し複雑な気持ちになりました。
私が迎えに行かなければ、こうちゃんはあとどのくらいの時間、雪だるまを作り続けていたんだろう…。

どうして真っ暗になるまで雪だるまを作っていたのか。
気持ちも状況も、上手に説明できるようになりました。
それでも腕時計もスマホも持っていないこうちゃんに流れている時間の感覚は、大人になってしまった今、私にはもう分かりません。
でも、時間を忘れて夢中でなにかに没頭した過去の記憶は私にもしっかりと残っています。
「あのとき、時計を気にせずもっとこうちゃんに付き合ってあげればよかったな」という場面がたくさん蘇ってきましたが、『あのとき』の砂場での時間も、『あのとき』の粘土遊びの時間も、もうかえってはきません。
小学1年生のこうちゃん、まだ時計の針を正確に読むことができません。
朝の忙しい時間に「ねぇ!今何時~!?」と聞いても「えっと…、7時55分?8時かな…?」とあいまいな答え。
時計を読めるようになることは確かな成長。
だけど、針を追いかけなくてもいい子どもにだけ流れる時間は、大切に大切に、こぼれ落ちないように守ってあげたい。

私が思っているよりずっとゆっくり、そして濃密に、こうちゃんの時間は日々流れているのかもしれません。
ゆっくり、大きくなってね。
ここで一句!
針知らず 夢中のままで 日が暮れる
「連載|室谷香菜子の「いっくじ」日記」
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文|HBCアナウンサー 室谷香菜子
青森県出身。2009年HBC入社。HBCラジオ「アフタービート」、「美香と香菜子のおさんぽ土曜日」などを担当。2018年第1子(男の子)を出産。趣味は寝かしつけ後のドラマ鑑賞と、美味しいお酒。息子(こうちゃん)との日常はInstagramでも発信中。
編集:Sitakke編集部あい
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