
ゲージの奥に小さく見える子犬たち。
生まれて2日目の北海道犬は、まだ目も開いていません。
手のひらにすっぽり収まる体重わずか300グラムほどの小さな命が、そこにありました。

札幌で北海道犬を育てて半世紀。
梅本博さん(80)は、小さな命に触れながら「子犬に触ってると時間がすぐ経ってしまう」と話します。

子犬を見つめる梅本さんの表情には、深い愛情と同時に、強い使命感が宿っていました。
1937年に国の天然記念物に指定された北海道犬。
かつて「アイヌ犬」と呼ばれた時代もあったこの犬種は、北海道の厳しい自然のなかで育まれ、小さめの厚い耳と密集した被毛を持ちます。

前胸部がたくましく発達し、重心が低く、ほかの中型日本犬よりがっちりした印象を与えます。
本来の飼育目的は、北海道に生息するヒグマなどの獣を狩ることでした。
「その昔、アイヌの人たちは狩りをする犬として使っていた。そういう犬なんだよね」と梅本さんは語ります。
しかしいま、北海道犬は危機に瀕しています。
1970年代の年間繁殖数は約7000匹でしたが、近年はわずか100匹ほどにとどまっているのです。
天然記念物でありながら、その数は急速に減少し続けています。
■ -10℃でも車を「避難所」にできる技「車中泊が趣味」の防災士が楽しみながら実践&伝授!
パートナーメディア