2025.12.13
ゆるむ
日本で初めてのシマエナガの写真集「シマエナガちゃん」が出版されたのは、2016年のこと。
写真家・小原玲さんによるものです。
もちろん、その写真のシマエナガは、すべて北海道で撮影されたものです。
小原さんは、報道写真家から動物写真家に転身し、1990年に「アザラシの赤ちゃん」の写真集を出版して、日本中に「アザラシの赤ちゃんブーム」を巻き起こしました。

しかし、地球温暖化のせいか、カナダのアザラシ繁殖地に流氷がまったく現れず、アザラシの赤ちゃんの撮影へと出かけることができない年がありました。
ちょっと落ち込みぎみで、鶴居村のサンクチュアリで、タンチョウの写真を撮影していた小原さんに、こんな声をかけたのは、札幌在住のカメラマン・北川譲さん。
「アザラシの赤ちゃんに、顔がそっくりな鳥が北海道にいます、撮ってみませんか?」と。
小原さんとシマエナガの物語は、こうして始まりました。
小原さんは、かつて一世を風靡(ふうび)した写真週刊誌の専属カメラマンでした。
湾岸戦争やソマリア内戦の現場で数々のスクープをモノにしたスゴ腕と、狙いを定めたら「何が何でも撮る!」粘り強さと、大胆な行動力で知られた、天才的なカメラマンです。
週刊誌創刊からの盟友の「不肖」こと宮嶋茂樹カメラマンから聞いた話だと、逮捕されてパトカーで護送される犯人や、疑惑政治家の乗った車への、小原さんの正面からの突撃はすさまじく、これ以上粘ったら、パトカーに轢(ひ)かれそうになると、パトカーのボンネットに乗っかって、写真を撮り続けることもしばしばあったのだそう。
当時のあだ名は「ボンネット乗りの小原」…。
シマエナガの写真集のために、雪景色にカモフラージュした全身白い衣装に身を包んでみたり、「この景色をバックにシマエナガを撮りたい!」と思ったら、日の出から日が暮れるまで、冷え込んだ森の中に座り続けるなど、まだシマエナガの情報が少ない時代に、かわいらしいシマエナガ満載の写真集を出版するのには、とても大変な試行錯誤がありました。

小原さんは、いつもこうおっしゃっていました。
「最初は『かわいい』っていう気持ちで良いんです。『かわいい』って感じる気持ちは、理屈抜きで心を動かされる、とても強い思いです。ですから『かわいいは最強』なんです。『かわいい』から始まった気持ちは、『だから守りたい』っていう思いに変わっていきます。それが森や環境を守る行動につながっていくのだろうと私は思っています」
小原さんは、北海道でエゾモモンガを追いかけていた年に、体調の不良を感じ、2021年11月17日、末期の肺がんのため亡くなってしまいました、まだ60歳でした。
私どもの、インスタグラム「北海道3大かわいい動物プロジェクト」も、小原さんの「北海道のかわいい動物たちを守りたい」という願いから生まれ、小原さんから受け継いだ、北海道の身近な動物たちを愛する心を、多くの人たちに広げたいという思いを込めて、発信を続けさせていただいています。
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