2025.12.15
ゆるむ
流氷の合間をぬって行われる、世界遺産・知床の海、羅臼沖のスケトウダラ漁です。
夜明け前、気温-10度前後の極寒のなか、漁師たちは日の出とともに出港し、前日に入れておいた刺し網を、流氷に船体をぶつけないよう巧みに操船しながら、何時間もかけて巻き上げていきます。

毎年1〜3月に、産卵のために羅臼沖に集まるスケトウダラを捕獲するこの漁では、おこぼれを狙っておよそ700羽もの、オオワシやオジロワシが氷上に集まり、時にアザラシも顔をのぞかせます。
観光客を乗せた「流氷クルーズ船」からは、その一部始終を間近で眺めることができ、それは世界自然遺産・知床の、厳しさと豊かさを同時に感じられる冬だけの特別な光景です。
スケトウダラは、すり身やかまぼこのほか、白子の「タチ」の味噌汁として、食卓を彩ります。

しかしながら主役はやはり「たらこ」です。
海水温の低い羅臼沖で獲れるスケトウダラは身が締まり、その卵の「たらこ」も高品質で、羅臼の「たらこ」を使った「辛子明太子」は、最高級品とされています。

羅臼では古くから「スケソ」と親しまれ、かつては「スケソウ御殿」と呼ばれる、立派な家が建つほど、町の暮らしを支えてきた主役の魚でもあります。
厳しい自然と向き合いながら、海の恵みをいただく漁師の仕事、その周りに集まる野生動物たち、そして町の歴史と食文化までもが一望できること…。
それこそが、流氷の海で営まれる羅臼のスケトウダラ漁が、見る者の心を強くひきつける最大の魅力です。
2025年12月14日 「北海道ドローン紀行」にて放送
撮影:LOVE.PHANTOM 宮川 和之 さん(厚岸町 在住)
音楽:HBCジュニアオーケストラ
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