2025.11.02

暮らす

北海道の絶景に危機…「流氷」が消えると、海の幸・冬の暮らしも変わってしまうかも【気象予報士が解説】

流氷と北海道の気候

そもそも流氷とは、海水が凍ってできた氷のかたまりが、海面を漂っているものです。

オホーツク海の北では、塩分の少ない海水がシベリアの厳しい寒気で冷やされ、海面に氷が生まれます。その氷が少しずつ成長しながら、海流や風によって南へ流れ、北海道の沿岸にたどり着くのです。

そして、流氷は北海道の冬の気候に大きな影響を与えています。

オホーツク海に流氷が広がると、白い陸地が広がったのと同じようになります。海にフタをしたような状態になって、雲のもとになる水蒸気が減り、オホーツク海では晴れる日が増えます。しかし、布団代わりとなる雲がないことにより、地面からの熱がどんどん逃げて、気温は下がっていきます。
 
そのため、北海道の多くの地域では1月下旬に寒さのピークとなるのに対し、網走などオホーツク海側では2月中旬まで寒さの底が続くのです。

網走と札幌の平均気温の比較(筆者作成)

札幌では2月上旬を過ぎると気温が上がり始めますが、流氷がやってくる網走ではそのころに寒さのピークを迎えます。

さらに、流氷はオホーツク海側だけではなく、日本海側の雪にも影響します。

内陸で冷えた空気が海へと吹き出し、日本海からやってくる季節風とぶつかることで雪雲が発達。これが札幌周辺や後志地方、道南方面に大雪をもたらすことがあります。

気象庁より:2020年2月8日9時の衛星可視画像を加工

こちらは2020年2月8日9時の衛星可視画像を加工したものです。
この日の朝はオホーツクの遠軽町生田原で-30.9度まで下がるなど、強烈に冷えました。内陸から吹き出す風と季節風がぶつかり、積丹半島周辺に集中して雪雲を流しています。

流氷は減ってきている

最新の観測によると、地球温暖化の影響でオホーツク海の流氷の面積は10年あたり3.2%のペースで減少していることがわかりました。

数字だけ聞くと小さいように感じますが、面積に直すと10年ごとに5.1万k㎡、北海道のおよそ6割に相当する面積が失われているのです。これは九州と四国を合わせた面積に匹敵します。(※北海道の面積はおよそ8.3万k㎡)

現在、網走の流氷の平年値は
・流氷初日:1月22日
・流氷終日:4月6日(流氷終日の観測は2021年で終了)
なっていて、2か月ほどは北海道の陸地から流氷を眺めることができます。
ただ、このまま追加的な温暖化対策を行わなかった場合、21世紀末には流氷の面積が8割近く減少する可能性も示唆されています。

日本域海洋予測データによる21世紀末における3月の海氷密度分布の将来予測(文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2025」より引用)

こちらは、21世紀末の3月の海氷密度分布の将来予測です。
左は各国が温暖化対策を進めた場合(2℃上昇シナリオ)、右が追加的な温暖化対策を取らなかった場合(4℃上昇シナリオ)の予測です。大きな差が出ているのがわかると思います。
21世紀末には北海道で流氷が見られなくなる可能性も…?

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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