2021.10.31
深めるは~い、皆さん、ごきげんよう。満島てる子と申します。
普段はバーの店長だったり、LGBTパレードの実行委員として人前でおしゃべりしたり。札幌でちょこまかと何かをしている“ 女装子 ”のゲイで~す。
いつもはお悩み相談コラムを担当しているあたしですが、今回は別件でお伝えしたいことが。
なんと今回、HBCの選挙特番企画に、開票日である10月31日(日)の夜、出演させていただけることになったのです。
題して「 #もんすけセンキョ 」!HBCニュースの公式YouTubeから、生配信しちゃうのよん。
2019年の参議院選の時も関わらせてもらったこの企画。
ゴリゴリの選挙特番というよりは、若者たちと語らいながら「 政治ってなんだろう? 」「 投票することってどうして重要なの? 」といった素朴な疑問について、みんなで”もうひとホリ”していくような番組となります。
なんと今回は、全道の高校生とお話しできるんだとか。 負けじとあたしもセーラー服に流行りのルーズソックス着て出ちゃおうかしら (そういう発想がすでにおばさんよね)。
でも、2016年に18歳にも実際に選挙権が与えられることになってから、より幅広い年齢層に政治に関するいろんなトピックについて知っていてほしい時代になったわよね~。
今回はゲイの当事者としての視点から、そんなトピックのひとつ「 同性婚・パートナーシップ制度と選挙 」について、思うところをつらつらと、すこし真面目にお話しさせていただければと思います。
今年の3月17日(水)。この北海道・札幌で、日本の歴史に残る出来事が起きました。
3組の同性カップルが、結婚する権利を求めて国と闘った裁判。
「結婚の自由をすべての人に 」 という原告団のスローガンでも知られるこの訴訟について、札幌地裁はこの日「同性婚が認められていない今の日本の状況は、憲法で保障されている“法の下の平等”に反している」という判決を下したのです。実質、原告側の勝訴でした。
傍聴席から判決文が読み上げられるのを聞きながら、思わず涙したのが忘れられません。
今この日本には、セクシャルマイノリティのカップルに対し、その生活を“婚姻”に相当するものとして認めるような、国家レベルの法制度はありません。平たく言えば「LGBTは結婚できない」国です。
結婚には、単なる幸せのかたち以上の意味があります。
二人の生活を保っていくために設けられた様々な社会保障制度。企業からの多種多様なサポート。家族になることで、たくさんの応援を周囲から受けられる、この社会。
にもかかわらずLGBTの当事者は、異性愛のカップルと変わらないような二人の暮らしを送っていたとしても、結婚という手続きが取れないがために、現状「家族」として国からは認められていません。
夫婦であったなら、当然、享受できる行政サービスなど社会からのいろんな支援とも無縁となっています。
みんなの“当たり前”が自分には許されていないという絶望感と、そんな状況で生きていくしかないという諦め。
おそらく、たくさんのセクシャルマイノリティの当事者が、そうした感情と共に生きることを余儀なくされてきました。あたし自身、誰かと結ばれることに、昔から強くあこがれながらも(小さい頃の落書きがウェディングドレスを着るお姫様ばっかりだったのを思い出すわぁ……(笑)、「自分には結婚なんて選択肢無いんだ」と、心のどこかで寂しいとも辛いとも言えない気持ちを抱き続けてきたように思います。
そんな気持ちを、もう抱かなくていいのかもしれない。武部知子裁判長が、同性婚が成立していないこの国の実態について「合理的根拠を欠く差別」だとはっきり言ってくれた時、あたしの胸に浮かんだのはそんな希望と感動でした。それと同時に、「今後どうなっていくかは自分たちの手にかかっている」と、身の引き締まるような感じがしたこともよく覚えています。
ここ数年、国会では同性婚であったり、LGBT関連法案についての議論が交わされてきました。今回の衆議院選挙でも、政策の重要なポイントとして、同性婚に関する様々な見解を政党の代表はじめ候補者たちが展開しています(各候補の同性婚に関する姿勢は こちらを。)
裁判の判決という司法の次は、法律をつくる立法府がどう動くかがカギとなります。そして、同性婚の実現に賛成の候補、反対の候補……どの人を国会に送り出すのかは、有権者たちが決めることです。つまりそれぞれの一票が、将来この国でLGBT当事者がどう生きていくのか、そのあり方を決定するといっても過言ではありません。あたしたちは歴史を作っていく権利を、その手に持っているのです。
さて、選挙の争点として取りざたされるまでになった同性婚。ですが、これが政治の大事な話題であると認知されたのは、たくさんの人の様々な歩みと努力があったからこそでした。その背景のひとつに、各地方自治体でのパートナーシップ制度の設立があります。
パートナーシップ制度とは、LGBT当事者のカップルが、婚姻に相当する関係であることを示す証書を発行できるという制度です。基本的に効力は各自治体の中にとどまりますが、現在日本では100を超える自治体がこの制度を導入しています。札幌でパートナーシップ制度ができたのは2017年。日本で6番目に早い制定でした。
先ほど紹介した「結婚の自由をすべての人に」訴訟の札幌地裁での判決文の中には、このパートナーシップ制度の普及について、セクシャルマイノリティに関する国民意識の高まりにつながっているとプラスの評価をしている箇所があります。この普及をもたらしたのは、各地でLGBT当事者が、パレードをはじめとする場面で社会制度の必要性を訴えかけ続けていたという事実です。
札幌のパートナーシップ制度の導入にあたっても、そのきっかけを作るために中心的に動いたのは、パレードの実行委員として長らく活動してきた当事者たちでした。「多様性を訴えるパレードがずっと行われてきた街で、LGBTを支える具体的な制度が無いのはおかしい」と声を上げたことで、市政が動き、街が変わったのです 。そして、今度はそうした制度の存在が、国政での重要課題という位置まで「同性婚」を押し上げるに至っています。こちらの経緯は、横尾俊成さんの2019年の論文*1に、詳しく紹介されています。
人々の声は、北海道を変え続けてもいます。
今年に入って、帯広市と函館市が、パートナーシップ制度の導入に向けて動き出しました。この裏には、現地のLGBT団体が呼びかけを行ったことが少なからぬ影響を及ぼしていると、あたしは考えています。
来たる11月3日(水)に、函館のパートナーシップ制度に関する意見交換会*2で講演をさせていただくのですが、こうした機会につながる努力を続けてきてくださった方々の存在に、何よりもまず頭が下がる思いです。
あたしの話自体は、ステーキの付け合わせのホウレンソウぐらい役割しか果たせないかもしれないけれど(また伝わりづらい例え……)。それでも、何かが変わるきっかけとの一つになればいいなと、そう思いながら現在準備をしています。
どうしても「政治」という言葉は、仰々しく、そして重苦しく響く部分もあるかもしれません。ですが、同性婚やパートナーシップ制度を例に見て取れるように、具体的な「声」をまず上げることが、地方自治体のあり方の見直しにつながり、ひいては国単位での問いかけにまで成長していきます。
日常に小さな疑問がわいたなら、それをさりげなく発信してみる……それがいつの日か、大きな動きに変わることもあります。政治とは、あたしたちの生活のすぐそばに常に存在しているものなのです。
同性婚と今回の選挙、そして、それにつながる土台としてのパートナーシップ制度と、人々の活動。
本日はちょっと真剣な話題について書かせていただきました。読んでくださった方、もし投票に行くときにチラッとこの記事を思い出してくれたなら、とっても嬉しいです。
そして!投票を済ませた後は(もちろんあたしみたいに期日前投票した方も)!
開票日の10月31日(日)は、HBCニュースの公式YouTubeから「#もんすけセンキョ2021 初めての投票!~高校生が“ガチ・トーク”衆院選特別番組」を要チェック!
ゲストのWhite Explosionさん、そして全道の高校生たちの繰り出すトークをご覧いただきながら、選挙結果をみんなで楽しく見届けちゃいましょう。大事なことだしね~。
あたしは堀内アナと一緒にMCを担当させていただきます(久しぶりの共演だわ~。割と堀内アナってベビーフェイスよね。高まる♡)。配信中はYouTubeのチャット欄への書き込み、大歓迎!SNSからも「#もんすけセンキョ」のタグを付けて意見を募集しています。真面目な意見から「てる子ファンデよれてるわよ!」ってツッコミまで、なんでもお待ちしてるわ!
ではではみなさん、またお悩み相談ルームでお会いいたしましょう。
Sitakkeね~!
*1 横尾俊成さんの2019年の論文
*2 函館市のパートナーシップ制度に関する意見交換会
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文|満島てる子
オープンリーゲイ*の女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。(*オープンリーゲイ=性的指向や性同一性をオープンにする生き方)