2021.11.06

暮らす

「元カレが玄関で…」恋愛関係がもつれ、不安を感じたら…弁護士に聞いた対処法【じぶんごとニュース#8】

2021年10月、札幌の住宅に、玄関ドアのロックをノコギリで切って侵入しようとしたとして、27歳の男が逮捕されました。その家に住む20代の女性が、「元カレが玄関ドアのチェーンをノコギリで切って入ろうとしてくる」と110番通報したということです。

道内では9月にも、別れ話をしている交際相手や、元交際相手との間で、脅迫や監禁、傷害などの事件が相次ぎました。

恋愛関係がもつれ、不安を感じたら、どうしたらいいのか…。札幌の弁護士に聞きました。

まず逃げることが大切

札幌の「つばき法律事務所」・多田絵理子(ただ・えりこ)弁護士は、切迫した身の危険を感じたときは、ためらわず警察に通報してほしいとした上で、「言っていることがかみ合わない、話し合えないと思ったら、まず逃げることが大切」と話します。

「話をしたら通じるんじゃないかと、交際相手と直接話そうとがんばり続けても、話がかみ合わないうちに暴力に発展することもある。相手の態度が変わってきたり、おかしいと感じたりしたら、家族でも友人でもいいので、頼れる人に話を聞いてもらってほしい

多田弁護士によると、頼れる行き先がなく、暴力などで身を隠す必要がある場合は、シェルター(暴力を受けた被害者が緊急一時的に避難できる施設)が有効です。

身体的な暴力がなかったとしても、夫婦や同棲している男女の場合、暴言や嫌がらせなどの「モラハラ」行為も、精神的暴力として、「DV防止法」の対象になる場合があります。たとえば、「誰が飯を食わせているんだ」「役に立たない」など価値を否定する言動や、親や友人との付き合いを制限する行為は精神的暴力です。

シェルターへの避難や、住民票の閲覧制限ができる場合がありますので、どんな手段がとれるのか悩んだときは、内閣府の相談窓口「 DV相談+(プラス)」(電話・メールで24時間対応)などに相談してください。

夫婦間のトラブルで、離婚調停などに発展する場合は、証拠があったほうがいいそうですが、叱責されているのを録音できない環境だとしても、メールなどのやりとりの履歴も証拠になるといいます。

警察に相談するようなことじゃないかも…と思っても

頼れる人がいない場合、利用してほしいのは無料の法律相談です。法律に関わる問題かわからないという場合も、気軽に頼ってほしいといいます。弁護士には守秘義務があるため、秘密にしたいことは守られます。

道内では、札幌弁護士会が、3回まで無料で法律相談に応じていて、電話やインターネットで予約できます。相談センターは札幌市中央区、札幌市厚別区、小樽、滝川、岩見沢、室蘭、苫小牧、岩内町、新ひだか町にありますが、ほかにも月に1~2回開かれる法律相談センターもありますので、札幌弁護士会のホームページ でご確認ください。

最初から弁護士に会うのはハードルが高いという人には、「ハロー弁護士相談」や「ほっとらいん ぶ~け」といった、無料の電話相談もあります。

「ハロー弁護士相談」(011-281-8686)は、道内在住の人限定で、弁護士が電話で15分程度、相談に乗るサービスです。祝日を除いた月曜から金曜までの午前10時から午後4時まで受け付けています。

「ほっとらいん ぶ~け」(050-3369-0550)は、道内在住の女性で、男性と話すのが苦手な方のために、必ず女性弁護士が対応する無料電話相談です。祝日やお盆、年末年始を除いて、月・水・金曜の午後4時から7時まで、火・木曜の正午から午後3時まで受け付けています。

同性の交際相手とのトラブルの場合

しかし、法的対応に差が出てしまうのが、同性の交際相手とのトラブルの場合です。

暴力や脅迫は刑法に違反するため、警察の対応に差はありませんが、たとえ同棲して夫婦と同じような生活を送ってきていたとしても、男女間とは強制力に差が出るおそれがあります。

DV防止法では、「保護命令」という、裁判所が加害者に被害者のつきまとい等をしてはいけないと命じ、違反した場合に懲役や罰金に処せる制度があります。しかし、DV防止法の保護の対象とされているのは、原則として「夫婦、事実婚の夫婦、離婚した男女、内縁関係を解消した男女、同棲している男女」です。

多田弁護士は、「同性間でのDV防止法の適用は、社会全体の考え方などによって、今後、広がる可能性もあります。しかし現状では、適用される可能性は低いと考えます」と話します。

シェルターについても、心が女性であっても、生物学的な女性でないと受け入れられない可能性もあり、選択肢が限られるといいます。

札幌弁護士会では、LGBTsのための無料電話相談「 にじいろ法律相談」(080-6090-2216)も開設しています。LGBTsについて研修を受けた弁護士だけが対応にあたっていて、匿名の相談や、家族や周囲の人からの相談も可能です。祝日を除く、毎月第2火曜日の午後5時半から7時半、第4金曜日の午前11時半から午後1時半に受け付けています。

しかし、「にじいろ法律相談」への相談は少ないといいます。多田弁護士は、「弁護士に対してもカミングアウトするハードルを高く感じているのかと思う。訴訟になると裁判所職員など、接する人が多くなるので、2次被害も心配しているのかもしれない」と話します。

同性どうしか、男女間かによってできる、法的対応や相談のしづらさの差。恋愛関係がもつれたとき、自分だけで解決しようとして悲しい事件が起こらないように、多田弁護士は「LGBTsについて社会全体が正しい知識を身に着けてほしい」と話していました。

「夫婦喧嘩は犬も食わない」…なんてことわざもありますが、カップルや夫婦のトラブルは、ほかの人に間に入ってもらう必要のあるものもあります。個人的なこと…と一人で抱え込まずに、不安を感じたら、誰かに頼ってもいいのです。多田弁護士は、「まずは頼れる誰かに話を聞いてもらってほしい」と強調していました。

文:Sitakke編集部 IKU

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