2021.10.15

食べる

【札幌・円山】「おいしいを諦めたくない」アレルギーなどで我慢してきた人も一緒に楽しめるヘルシーお菓子

「卵アレルギーの人は、ケーキを食べられない」
「ベジタリアンの人は、日本では食べられるものがとても少ない」
そうして我慢してきた人も、同じ食べ物を一緒に楽しめるようにと奮闘する、お菓子作家がいます。

乳製品・卵・小麦・白い砂糖を使わないお菓子

札幌の地下鉄東西線・円山公園駅から徒歩10分ほどにある、『アリサの北海道お菓子店 chat』。

ずらりと並ぶ、ケーキや焼き菓子…すべて、乳製品・卵・小麦・白い砂糖を使わずに作っているんです。ヴィーガン(完全菜食主義者)やグルテンフリーの人も安心して食べられるお菓子です。

でも、ショートケーキはスポンジやクリームを使っていて、どこからどう見ても「ふつう」…。パンプキンケーキにも、クリームが乗っています。

いちごのショートケーキ(580円)、パンプキンケーキ(550円)

食べてみても、クリームはなめらか。シナモンが香るパンプキンケーキは、かぼちゃのホクホク感と甘さが優しく広がります。

ただ材料を置き換えるだけでは、「誰もが楽しめる」お菓子にはならない

この店を営むのは、ヘルシーお菓子作家・柴田愛里沙(しばた・ありさ)さんです。

クリームは、豆乳やココナッツオイル、ひよこ豆などを混ぜ合わせて作っていて、生地には米粉を使っているそう。でも、普通のケーキのレシピの材料を、ただ置き換えればいい、というわけではありません。

「米粉のお菓子って普通に作ろうとすると、おもちや、ういろうみたいになっちゃうんですよ。粉と水の分量や、混ぜるタイミング工夫しながら、日々美味しいお菓子になるように研究しています」

モンブランタルト(660円)

秋のおすすめ、モンブランタルトのタルト部分は米粉で作られていますが、ういろうとは程遠い、ザクザクの食感に仕上がっています。一方で、モンブランクリームはなめらか。白い砂糖を使っていない分、素材の味が引き立っていて、栗本来の風味を感じられます。

プルーンの焼き込みタルト(550円)

こちらは、余市産のプルーンを使ったタルト。季節に合わせて果物を変えますが、果物によって含んでいる水分量も違うため、毎回の研究が欠かせないそうです。

この店に並ぶのは、アレルギーなどで食に制限がある人だけが、「食べられればいい」お菓子ではありません。食に制限がある人も、ない人も、「一緒においしく楽しめる」お菓子。普通のお菓子と比べると、見た目は「同じ」に、味や香りは「よりおいしい」と思ってもらえるように、突き詰めているのです。

原点は「おいしいものを諦めたくない」という気持ち

ヨーロッパでは、多くの飲食店で「ベジタリアン対応」「ヴィーガン対応」の選択肢があり、メニューに明記されています。しかし、日本ではまだまだ浸透していないのが現状です。メニュー名は「ベジタブル〇〇」で、実物も肉類を使っていないように見えても、「だしはカツオでとっているのか、昆布でとっているのか…」など、不安が残ります。

そんな現状を変えたいと、「安心して食べられるお菓子」を生み出す愛里沙さん。その想いは、家族の思い出と結びついています。

ベビーカーに乗っているのが愛里沙さん

愛里沙さんの母方の祖父は、ドイツ人。幼少期から、国際色豊かな親せきが札幌に会いに来ることもあれば、自身がドイツに行くこともありました。そのため、国籍・人種・考え方など、「人はそれぞれ違うこと」、「その違いを尊重すること」を、「当たり前」として身に着けてきたのです。

一方で、日本の給食では、体質に合わないものでも、残さず食べるように強制された経験がありました。好き嫌いではなく、体質や考え方は人によって違うのに、なぜ日本では「食の違い」が受け入れられていないのか…疑問を持つようになります。

加えて、愛里沙さんは小さな頃から、アトピーに悩まされてきました。病院の検査では特定の食品には反応しなかったため、消化の際に内臓への負担が多い「小麦・卵・乳製品」を避けるようにしたといいます。

お母さんに支えられ、ぬいぐるみを持っているのが愛里沙さん

しかし…お母さんの料理やお菓子は、ドイツ流の、乳製品や小麦を使ったものがメイン。
お母さんの手料理を、みんなと一緒に食べたい!」「おいしいものを諦めたくない!」その想いが、体に優しいレシピ研究の原点になりました。

お母さんお手製のプルーンのパイとシュトーレン。どちらも小麦・バターたっぷり

体に優しいお菓子に乗せた、多様性への想い

体に優しいお菓子を、より多くの人に楽しんでほしいと、11月中旬からは、店の2階にイートインスペースとして「喫茶室」も開きます。

さらに、オンライン販売をしたり、Youtube「愛里沙の北海道暮らし」でレシピを公開したりと、広い範囲にヘルシーお菓子を発信しています。

「日々ひとつひとつのお菓子を作る積み重ねなので、夢とか大それたことはありませんが…ヴィーガンやグルテンフリーに限らず、自分とは違う考え方の人がいても『あっそういう暮らしや考え方もあるよね』って、過剰反応しないで受け入れられる雰囲気ができたらいい。

そのために、レシピを公開したり、お菓子っていうみんなが手に取りやすいものに想いを乗せていたりする。今アレルギー、ヴィーガン、グルテンフリーの人たちが感じている生きづらさが、ちょっとでも少なくなったらいいなって

愛里沙さんが生み出すお菓子は、「おいしい」だけでなく、みんなと同じものを「一緒に味わうのが楽しい」という笑顔も作り出そうとしています。

ホールケーキ4号サイズ(4320円・要予約)

愛里沙さんが出演した、10月16日(土)の「SitakkeTV」、見逃し配信はこちらの記事から!
苦労して編み出した、とっておきのお菓子のレシピ…公開する理由とは?

***
アリサの北海道お菓子店 chat
住所  :札幌市中央区南6条西23丁目4-26
営業時間:11〜17時 
定休日 :日曜・月曜・火曜 ※11月3日から9日は催事のため休み
喫茶室:11月中旬から。利用可能時間は12~16時半
インスタグラム:https://www.instagram.com/arisa_hokkaido/

文:Sitakke編集部 IKU

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Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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