2025.03.17

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馬を足元から支える。83歳の職人技 馬としっかり目を合わせ、丁寧に着実に【北海道十勝・ばんえい競馬】

しかし、時代の流れとともに農業の機械化が進み、農耕馬が少なくなっていきました。
美瑛町に馬がいなくなったころ、知り合いの調教師から誘いを受け、ばんえい競馬の世界への門を叩きました。

「農耕馬も競走馬も、基本的にはひづめの形は変わらない」と言いますが、千葉さんの作る蹄鉄には、細かな工夫がされています。

蹄鉄は、夏用と冬用で形が違います。
夏用の蹄鉄は平ですが、冬用は凹凸があり「刻み蹄鉄」と呼ばれています。
冬になれば、コースの雪が積もり滑りやすくなりますが、この「刻み」があることで、路面をしっかりと捉えることができ、競走馬たちが安心して走ることができるのです。

昔は冬の蹄鉄は「刻み」ではなく、鋭いスパイクのような形をしていて、馬が足を引っ掛けるなどしてケガをすることが多かったといいます。調教師から相談をされた千葉さんが思いついたのが「刻み蹄鉄」でした。

でき上がるまでは、試行錯誤の連続だったといいます。

「刻みの山を作るのにね。あんまり尖ってこないしな。何が悪いのかなぁということさ、これは形が悪いのだなぁとか考えたり」

一本のまっすぐな鉄の棒から作り始め、ひづめの形に曲げていき、一つ一つに細かく刻みを打ち込んでいきます。

「刻み」の作り方は時代を経ても変わっていません。千葉さんが作り上げた、独自の技術です。

でき上がった蹄鉄を毎朝、調教前の馬一頭一頭に丁寧に装蹄していきます。

馬によってひづめの形は違います。蹄鉄を約1300度のコークスの火の中に入れて熱し、取り出しすと馬の足元を見ながら、冷めない間にハンマーで打ち込みます。

これを繰り返しながら、その馬に合う形を作っていきます。

「馬の足元ばっかり見ているから、この馬がオスだかメスだかわからないときがあるのさ。でも足を見れば馬の状態がわかるの」

前脚、後脚の順番に、熱した蹄鉄をひづめにあて、釘を打ちこみながら装蹄します。
大きな煙も上がりますが、馬のひづめは厚く、痛みはないといいます。

しかし馬によって性格が違うので、時には暴れたり叫んだりする馬もいます。

そのときは馬としっかり目を合わせ、呼吸を整えます。今まで養ってきた経験と、馬との信頼関係で、落ち着かせます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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