2025.03.17
深めるまだ太陽が昇っていない早朝。
「カン、カン、カン、カン」
鉄の音が響きます。
十勝ばんえい競馬、厩舎内の装蹄所です。
ひづめの調整のために、競走馬たちが駆け込んでいます。
「(午前)6時ごろから仕事をするから、5時ったら起きているわなぁ。ハハハ」
笑いながら答えるのは、この道一筋68年の蹄鉄装蹄師、千葉喜久雄(ちば・きくお)さん・83歳です。
ばんえい競馬で最高齢の装蹄師で、競走馬を足元から支えている存在です。
千葉さんが蹄鉄装蹄師として仕事を始めたのは15歳のころ。
先に兄が北海道・美瑛町で装蹄師として活躍していて、中学校卒業後そこに弟子入りしました。
当時の主役は競走馬ではなく、畑などを耕すときに活躍する農耕馬でした。
千葉さんは、「農家の人は馬がいなければ畑も起こせないし、馬は蹄鉄を履かせなきゃいけないしね。それは忙しかったんだよ。そんなような時代だから誰も『装蹄師になる!』って言う人もいないでしょ?それで兄と2人でやってたわけさ」と振り返ります。
「そりゃあ大変だったよ。仕事を覚えるのが大変だった。蹄鉄には触ったことなかったしね」
忙しい毎日。朝早くから夜遅くまで続く装蹄作業で、腕を磨いてきました。