2024.09.27
暮らす2023年10月から、Sitakkeオリジナルコミックとして連載をスタートした、「東日本大震災から学ぶ、元自衛隊員が描く“こころの防災」。たくさんの反響を頂いた本連載も、今回で最終話を迎えました。ご愛読いただき、本当にありがとうございました!
「東日本大震災派遣のご経験をもとに、ヤマモトさんが思う“防災のあり方”について漫画を描いていただけませんか?」
2023年8月、Sitakke編集部のナベ子さんからこんな相談を頂いたのが、この連載が始まったきっかけでした。
この頃の私は、約10年務めた自衛隊を辞め、北海道に移住し、イラストレーターとしての仕事をスタートしたばかりでした。さらには、息子を出産し半年ばかり。いまの自分に漫画連載ができるのだろうか…?と迷いがありました。
災害派遣当時のようすを題材にした漫画を描いた経験はなく、人前で積極的に当時の話をしたこともありませんでした。「新卒ぺーぺーだった私なんかに語れることがあるのだろうか」というためらいもありました。
でも、編集担当のナベ子さんといろんな話をしていく中で、災害派遣当時のさまざまな経験や感じたことが、涙と共に言葉になり、どんどん溢れ出てきました。
そして、「今のヤマモトさんだからこそ、伝えられることがいっぱいあると思うんです!」という後押しをきっかけに、漫画を描くことを決意しました。
ただ…連載を開始して3か月ほどは、災害当時のことを振り返ることが辛く、連載を描き切れるのだろうかと不安になることもありました。
でも、連載の回を追うごとに、どこか救われていく自分もいたのです。
災害当時、あの過酷な環境で「どうにもできなかったこと/どうしてもあげられなかったこと」がたくさんあります。そういったことと徹底的に向き合いながら、漫画に描いていくことは…当時のさまざまな思いを、少しずつ昇華していく作業でもありました。
そして、私の話に興味を持ってくれる読者の皆さんのためにも、この漫画を描き切りたい。そんな思いで、こうして最終話を迎えることができました。
この連載を読んでくれた読者の皆さんに対し、お礼の気持ちを伝えたいです。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
最後にひとつだけ、皆さんにお願いしたいことがあります。
それは、この漫画の情報を鵜呑みにするのではなく、“もし自分だったらどうするか”と、読者の皆さん自身に考えて頂きたいということです。
世の中には、災害・防災に関する情報がたくさん溢れています。
今回の連載を通し、私自身も、体験に基づくさまざまな情報を発信してきました。
でも、みなさんには、私が発信した情報や、世の中に出回っている情報を、そのまま鵜呑みにしてほしくはないのです。
その理由は、大きく二つあります。
まず、それぞれのライフスタイルや価値観が異なるように、災害に必要な備えは各個人・各家庭によって異なるということ。
また、その当時“正しい”とされる事柄も、のちに、変化していく場合があるからです。(きっとこれは防災情報に限った話ではありません)
たとえば、私がこれまで発信してきた知恵も、あくまで「東日本大震災」での体験をベースにして描いていたものです。きっと、1~2年もたてば、この情報だって、古くなります。
この漫画のねらいは、あくまで、“きっかけ”をお届けすること。
今回の漫画で得た・感じた・不思議に思ったことをきっかけに、ぜひご自身や身の回りの人の大切な命、そして“こころを守るための知恵”について考えを巡らせてみていただけると、嬉しいです!
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漫画:ヤマモトクミコ
北海道・札幌市在住のイラストレーター。2010年に、海上自衛隊入隊。入隊1年目で東日本大震災の支援に従事。約10年間、自衛隊員として全国各地を飛び回る日々を過ごし、結婚・出産を経て、退職。独学でイラストレーターに。2児の母。
Instagram: @kumiko_illust
X: @kumiko_illust
編集:Sitakke編集部 ナベ子
【参考】イラスト作成時の写真資料として
海上自衛隊ホームページ
■前回の話:東日本大震災の災害派遣を通して…新米隊員だった私の”これまで”と”これから”のこと
■1話目「女性隊員の数はわずか....」元海上自衛隊員の私が、東日本大震災の支援を通して、いま伝えたいこと
■まとめ読み→連載|元自衛隊員が描く“こころの防災”