2024.07.30

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大きくなったわけは謎のままだが、細部まで美しく。『きのした菓子舗』手の平大の練りきり【森町】

父から子へ、継承される技術と味

2代目の木下信さん。伝統菓子を大切にしながら、森町をアピールする新しい菓子の開発にも積極的だ。地元の特産物であるブルーベリーをつかった饅頭など新商品を次々と生み出している。

その厳しさゆえ、一瞬でも父と息子の関係で接すると喧嘩になってしまうため、信さんは「自分はこの人の息子ではない」と毎日言い聞かせるのに必死だった。「修業を始めてから10年間、一度も褒められたことはなかった。でもある日、僕がつくった菓子を食べて一言だけ褒めてくれた。10年経って初めてのことでした。その晩は嬉しくて、正直泣きましたね」

こうして父から息子へと継承された技術と味。特に代名詞である上生菓子(練りきり)は、店の顔であり名刺代わりの品である。それもそのはず、『きのした菓子舗』の上生菓子はとにかく大きいのだ。季節の上生菓子というのは、通常5cmほどで指でつまめるサイズ。もちろんそのサイズのものもつくっているのだが、圧倒的に注文が多いのがその倍の直径10cmを誇る手の平大の上生菓子。これほど大きな練りきりを見る機会は、少なくても函館ではないに等しい。

これが『きのした菓子舗』の上生菓子。手の平に乗せるとその大きさは一目瞭然だ。森町では昔からこのサイズの「五つ盛り」や「九つ盛り」が仏事や法要のお供え物として定番といわれている。

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