2024.04.29
深める確かに、狩りをしなければ手に入らないものってあります。セックスはそのいい例。
「欲しい」と願い、それを声にし、そのために動き求めなくては手にできない実り。口にしたときの美味しさは格別でしょう。
でもね、栄養豊かな味わい深い実りって、大地にしっかりと根を張り、幹を太らせ、枝を大きく茂らせるまでに成長した樹木の存在が、本来あってのこと。そして何より、そうした木を育てるという過程があってこそなのよ。
何が言いたいかというとね。セックスという果実を豊かなものとしてきちんと手にするためには、誰かとの関係を耕し、そこに水をやり、伸びていくようはぐくむような取り組みがときに大切になってくると、あたしは個人的に考えているんです。
さながら 「農耕民族」が培ってきた技術みたいな話よね。
そう、さすけ子さん。
あたし思うんだけど、あなたそういう「誰かとの仲を育てる」「誰かと一緒に育つ」ってところに一度注力してみた方がいい。ハンティングだけの日々では見られない風景と出会うことが、今あなたには必要なんじゃないかしら。
そうじゃないと、なんとなくなんだけど、あたしさすけ子さんはいつか何かで悔やむ事になる気がする。現在好きな相手との間でも苦しみを抱えるかもしれないし、もっと先の人生でも壁にぶち当たるかもしれない。
でも、あたしは正直そうなってほしくはないの。
狩猟のせいで致命傷を抱えるなんて、絶対しんどいじゃない。
それぐらいなら、時間と手間はかかるけど着実に緑を豊かにし実りを育てていくような、そんな人との関わり方があるんだってことを、ぜひさすけ子さんには身をもって知ってもらいたいのよね。
だからさすけ子さん。あなた、できたら農耕民族としての道を、今から少しずつ歩み始めてみてはどうかしら。
今回は「欲しい!」という気持ちにストッパー利かなそうだったら、まぁ無理しなくていいけれど……例えば、今好きなお相手が言う「友達」という関係を貴重な種子と見て、そこに水やりをし、少しずつ可能なら「恋人」という実りに近づけるよう、ふたりの仲を深める努力をしてみるとか。
それだけでも、大きな一歩になる気がするのよね。
いずれうまくいけば、狩猟と農耕というふたつのやり方を知っている、素敵な「愛の人」になれるはず。
さすけ子さん、どうかあなたなりに色々「育てる」ということもぜひやってみて。そこにきっと、真に「後悔」しない恋愛が待っているだろうから。
本能に従って「狩る」ことの醍醐味も大事にしつつ。
さすけ子さんが素敵な人とともに、枝を伸ばし、根を張り、おのれ自身美しく咲いたうえでおいしい実りを得てくれればいいなぁと、さくらと梅が先ごろようやく花開いた北の大地から、あたしは思っているのでした。
というわけで、今回はセックスや恋愛といった話題について、「狩猟」「農耕」なんて比喩的な表現も用いながら、少しお話させていただきました。
人によって、どっちのやり方が得意とか苦手とか、身に馴染みがあるとかって変わってくるよね。実はかくいうあたしはハンティング、大不得意人間。
いつもときめく相手が現れても、タイミング逃すはもちろんのこと、おのれの技量や積極性なんかも全然足りなくて、いつの間にやら向こうはどこかへ行ってしまってたりするのよね。とほほ……。
さすけ子さんと逆で、あたしは狩猟民族としてのトレーニングを自分に課した方がいいかもしれないわね。
そんなことを、今回パソコンに向かいながらずっと考えておりました。
素敵な出会いは、どなた様も逃しませぬように!
春もきたわけだし、みんな楽しんじゃいましょうね。
ではではみなさん、Sitakkeね~!
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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部 ナベ子
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。LGBTパレードを主催する「 さっぽろレインボープライド」の実行委員を兼任。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。
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