ネオンの灯りでギラついた本町歓楽街のど真ん中。そこに、少し場違いにも見える落ち着いた佇まいの店『家亭処 みうら』はある。
函館出身のおかみさん・三浦寛子さんいわく「ちゃんと数えてないけど、たしか今年の7月で30周年」以来、一貫して家庭料理をつくり続けてきた。そのルーツは母の存在だ。
「料理上手な人でね。魚の煮つけとか野菜のお浸しとかなんでも美味しいもんだから、そのおかげで食べることが好きになったのよ」
三浦さんは高校卒業後に上京して就職。その当時から稼いだ金は趣味の食べ歩きに費やしたとか。
席に座って、まず目の前に出てくるのは日替わりのお通し。それも「サービスだからどんどん食べなさい」と、惜しげもなく。
「採算?合わないわよ(笑)。けどお腹いっぱいになってもらいたいじゃない?」と一笑する。
一応壁にはメニュー表もあるが、リクエストがあれば極力応えられるよう食材を準備する。「一人暮らしだとたくさんの食材って食べられないしょ。野菜もいっぱい食べてほしいしね」
単身赴任で一人暮らしをしている常連も多いからと、健康のことも考えつつ多少のワガママにも応えて料理をつくる。その姿に母親の姿を重ねる客もきっと多いだろう。そんな大きな“子どもたち”のため、今宵も“母”は歓楽街の真ん中で優しい明かりを灯す。
【家亭処 みうら】
函館市本町3-2 七番街ビル1F
0138-56-7244
***
『peeps hakodate』vol,123「恋しい味。」より
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