2024.04.06

暮らす

アートは、生きることそのもの。“満たされないなにか”があるからこそ、面白くできる【アートと暮らす・後編】

「アーティストは“友達”だから」

小田井真美さんと、筆者「わっか」

学生時代は、美大に通い、さまざまな作品を作っていたという小田井さん。アーティストとしてではなく、AIRディレクターとしてアートに携わることになったきっかけは何なのだろうか?

「学生の頃は、作品づくりも好きでしたけれど、展示企画を考えるのも好きだったんです。自分や友人の作品の魅力を伝えるには、どんな場所で、どんな企画で展示するといいんだろう?ということを、試行錯誤をすることが楽しくって。見よう見まねで、友人とアートイベントを開いたりしましたよ」

「次第に、作品をつくることよりも、アーティストの作品の魅力を発信するための企画づくりの方をやってみたいと思うようになってきたんです。仕事でもそんな取り組みができたらいいなぁって」

とはいえ、当時、作品をつくること以外で、アートに関わることのできる職業といえば、ほとんどが美術館かギャラリーでの仕事に限られていたといいます。

「でも、学芸員のようにアーティストを研究の対象にするのもしっくりこないし、ギャラリストのようにアーティストとマーケットの繋ぎ役に役になるのもどこか違う。自分がアーティストと築きたい関係にはフィットしなかったんです」

アーティストとは仕事仲間じゃなくて、ずっと“友達”のような、対等な関係でいたいなって。そう気づいたんです

たしかに取材中も、滞在中のアーティストたちが次々とやってきては、小田井さんに親し気な雰囲気で話しかけていく。外から部屋に戻ってきたアーティストに、小田井さんが「おかえり~」と言うと、当たり前のようにアーティストが「ただいま!小田井さん!一緒にご飯を食べよう、飲もう」とフランクに話しかけている姿を何度も見かけた。

小田井さんと、韓国から来たアーティスト。まるで友達同士のような微笑ましいやりとりだった。

学生時代に友人とアートイベントを開催していた時のように、アーティストとは常に対等な関係性でいたいという小田井さん。働き方を模索する中で、「AIR」の運営という仕事にたどり着いたんだそう。

「一人一人のアーティストと会話をして、自由に動きやすい枠組みをつくったり、企画を考えたりすることが楽しい。AIRディレクターとして、作品と社会が繋がる一部になれることに、やりがいを感じています」と小田井さんは笑顔で話す。

「さっぽろ天神山アートスタジオ」の立ち上げから運営に至るまで、幅広い業務に携わったという小田井さん。

先にも紹介したように、このスタジオでは、従来のAIRの在り方に捉われない様々な取り組みが行われている。
たとえば、運営側の都合に合わせるのではなく、アーティスト側の希望する滞在期間をできるだけ優先し、自由に泊まれる仕組みもそのひとつ。これも、小田井さんのいう、「アーティストとは友達のように、対等な関係でいたい」という思いのあらわれだろう。

筆者・ わっか

私自身、大学でアートを学んでいるなかで、たまに悩むことがある。
それは、他人と物事を進める上で、相手と対等でい続けることってすごく難しいんじゃないか、ということだ。
たとえば授業で、たった15分の映像を、10人で作ったのときでさえ、モヤモヤするようなことがたくさんあった。

仕切ったり、お願いしたりする中で、パワーバランスって、気づかないうちに生まれてしまいがちだと思う。だって、物事を進める上では、その方が早かったり、楽だったりするから。

そういう流れに対して抗いながらも、「いまの仕事が楽しい」と笑顔で話す、小田井さんの姿は純粋にかっこいいと思った。

いま名前があるものでは、自分の納得のいく「相手との関係性」を構築することができないならば、自分にピッタリのやり方をゼロから作り上げていく。小田井さんのその取り組みそのものが、すごくクリエイティブなことだと私は感じた。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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