札幌市円山動物園は、ことし70周年を迎えました!
これを記念したSitakkeの連載、「円山動物園さんぽ」。
長く愛されてきた背景には、一度だけでは味わい尽くせない、見どころの多さがあります。「さんぽ」するように気軽に通うことで見つけられる、動物たちの深~い魅力をお伝えしていきます。
実は円山動物園の魅力は、公開されている動物たちだけではありません。
今回ご紹介する、「トガリネズミ」は、非公開の施設で飼育されています。
公開しない動物を飼育する意義とは…?
ネズミのような小さな体つき。
でも、手や顔の形、毛の生え方はモグラのよう…。
「トガリネズミ」は
「ネズミ」という名前がついていますが、「モグラ」に近い小型の哺乳類です。
北海道には「ヒメトガリネズミ」や「オオアシトガリネズミ」のほか、
「エゾトガリネズミ」、「トウキョウトガリネズミ」の4種が生息しています。
「トウキョウ」といいつつ、生息地は東京ではなく北海道…。
新種として発見されたとき、標本のラベルにYezo<エゾ>とすべきところを
Yedo<エド>と誤って表記されたために、この和名になったそう。
体はとても小さく、体重測定をする飼育員さんの小指ほど。
円山動物園にいる「ヒメトガリネズミ」は、体重わずか4グラム!
特別大柄だという「オオアシトガリネズミ」の「マサオ」さえ、たった14グラムです。
トガリネズミは、実は身近に生息しています。
札幌市内でもすぐ近くにいて、
円山動物園で飼育しているトガリネズミも、園内で捕獲したそう。
けれど、その生態は謎だらけ。
非常に小さいうえ、夜行性で、人目につかずに生活しています。
身近にいるのに、よく知らないままでいいのか…。
そこで円山動物園は、「研究」に乗り出したのです。
飼育・研究を担当する本田直也(ほんだ・なおや)さんは
まだ何もわかっていないからこそ、「神秘」があると話します。
「世界最小の種も北海道にいるんです。
それは北海道の動物園がスポットを当てるべき。
北海道を代表する動物の一種として、真剣に向き合いたい」
研究は北海道大学と東海大学と共同で行っています。
本田さんは
「Win-Winの協力関係。
大学はフィールド研究に強いが、
動物園の飼育下の研究だからこそわかることもたくさんある」と意気込みます。
「つぶらな瞳が魅力。
モグラでもネズミでもない、トウキョウにもいない…そんな面白い動物いない!」と
トガリネズミに熱い視線を注ぐ本田さん。
研究のためトガリネズミを捕獲した際は、
園内に60個ほどの植木鉢を仕掛けたといいますが、
トガリネズミは植木鉢のような狭い空間にいると
すばやく動きまわって、2時間ほどで「電池切れ」のように死んでしまうそう。
そのため、トガリネズミが活動する夜中に
2時間おきに植木鉢を見て回ったといいます。
熱心な研究の背景には、
「公開」だけではない、動物園の社会的な意義への想いがあります。
研究の先に目指すのは、飼育技術の向上や繁殖技術の確立。
「知る」という一歩が、身近な動物の生物多様性の保全の基礎になるのです。
ときには、
動物園で公開された動物たちを「見て楽しむ」だけでなく、
身近に暮らす動物の「神秘」に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。
時期は未定ですが、その姿もじっくり見てもらえるよう
円山動物園では、トガリネズミの展示も目指しているということです!
次回は、すばやいトガリネズミとは対照的に「ゆ~っくり」動く、
「つぶらな瞳」の動物をご紹介します。お楽しみに!
過去記事一覧:円山動物園さんぽ