2024.04.04

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単純な話ではない ホームレス/ハウスレス~札幌発・生活困窮者の今と支援(第5話)伴走型支援で寄り添う留学生ボランティア

(左)炊き出し用におにぎりを作るアムエルさん(札幌市・1月)

アムエルさんは、大学3年生の時から生活困窮者への支援を始めて1年4か月になります。

「支援をしたら、困窮者の方にはその“見返り”として『脱路上』をしてほしいと最初は思っていたんです。でも、その考え方は良くないことに気づいたんです。…って言うか、困窮者の実情がわかっていなかったことに気づいたんです」

「そんな単純な話ではないんです」

「例えば、夜回りでパンを配っている時、一人で何個も要求する人がいるんですけど、何度も会って、周りからの情報も得てわかったことは、その人はパンをほかの困窮者にあげていたんですね。その見返りとして、自分が困った時に何かをしてもらっていたんです。つまり、困窮者同士にネットワークがあって、パンはそのコミュニティの通貨として流通していたんです」

「生活保護を受給する手続きや就労のための手続きをお手伝いすることは、ノウハウとしてできるんですけれど、その前に、精神的なケアを必要とする方が、困窮者にはとても多いんです。お金を得たとしても、お酒を飲み過ぎたりギャンブルにつぎ込んだりして使い方を間違ってしまい、また路上に戻ってしまう人。知的な障害や身体に障害があって、社会の複雑なシステムをそもそも理解できない人。うつ病など精神疾患がありながら自分では気づかないまま孤立している人。・・・そうした人たちには、まず寄り添って現状を認め、何度も会うことで、時間を共にしながら話をすることが必要なんです。伴走型の支援ですよね」

アムエルさんは来月、事務局長の任期を終えますが、引き続き労福会の一メンバーとして、困窮者と関わってゆくつもりです。

(*注1)北海道の労働と福祉を考える会(通称・労福会): 1999年に北海道大学の学生と教員が母体となって発足した任意のボランティア団体で、路上生活者ら生活困窮者の把握と調査、支援を目的としています。会員は学生に加えて会社員や主婦、公務員、自営業者、福祉関係者、教育関係者ら一般人も加わって運営されています。毎週土曜日には「夜回り」と称して札幌市内を歩き、路上生活者らと対話しながら実態を把握し、食料や生活必需品等を配布するなどの支援を続けています。また月に1回のペースで「炊き出し」も行っています。運営資金は企業や団体、個人からの寄付と助成金、会員の会費などで賄われ、ボランティスタッフと寄付金を募集しています。(http://www.roufuku.org/)

◇文・写真 HBC油谷弘洋

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炊き出し用に作られたおにぎり(札幌市・1月)

路上生活者はこの十数年で減り、街角でも見かけることが少なくなりました。その一方で、車の中やインターネットカフェを転々としながら暮らす人が増え、生活困窮者の実態が見えにくくなっています。ハウスレスという言葉をご存知でしょうか?ホームレスとハウスレスの違いは何でしょうか?

生活困窮者がそうした暮らしを続ける理由は多様です。経済的な問題だけではなく、家族や職場とのトラブルから居場所をなくして孤立する人、障害や精神疾患があって社会への適応が難しい人、依存症になって治療を要しながらもその伝手を得ることができない人、一旦は生活保護の受給を得てもまた路上に戻る人など様々です。

冬には-10℃を下回る厳しい環境の札幌で、ホームレスの人、ハウスレスの人、彼らを支援する人…。この連載企画では、それぞれの暮らしと活動に向き合って、私たちのすぐそばで起きている貧困と格差の今を考えます。

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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