2024.03.07
深めるその高齢の男性と初めて会ったのは、去年10月7日午後8時過ぎのことでした。札幌市内のある施設の軒先にいました。ベンチの傍らには、キャリーバッグ1つと大きなボストンバッグが2つあり、いずれも衣類などが詰められてパンパンでした。
路上生活者ら生活困窮者の支援をしている任意のボランティア団体「北海道の労働と福祉を考える会(通称・労福会)」(*注1)が、毎週土曜日夜に行なっている「夜回り(*注2)」に同行していた時のことです。
(労福会のメンバー)「○○さん、どうですか?お元気でしたか?」
(男性)「ボチボチや」
(労福会のメンバー)「パンを持って来ました。2つ選んでください」
(男性)「う~んと…じゃあ、これとこれ、いただきます」
(私)「取材で同行しています」
(男性)「あ~、何か?」
(私)「どうしていらっしゃるんですか?」
(男性)「ホームレス、続けてんねん」
(私)「どうしてですか?」
(男性)「・・・」
(私)「寒くないですか?」
(男性)「さむないよ。家はない」
(労福会のメンバー)「次の場所へ行きましょうか」
(私)「また、ゆっくり話を聴かせてください」
(男性)「・・・」
やわらかい関西弁を話すその男性が、この8日後、事件に巻き込まれて、それまで20年余り続けてきた路上での生活を止めることになるとは、この時、誰も、本人すら、思っていませんでした…。