2024.02.05
出かける現在では最も人気の城となっているノイシュヴァンシュタイン城ですが、入城者数の歴史統計を見るとその絶大な人気が1970年代から始まったもので、それ以前はむしろフランス風の華麗な宮殿であるリンダーホーフ城の方が人気が高かったことが分かります。ディズニーランドの城のモデルつまり「テーマ・ワールド」の元祖と見なされるようになったことで、見た目華麗な宮殿の人気を凌駕するようになったのです。
ところで筆者が20代でノイシュヴァンシュタイン城を初めて見学した時、ディズニーランド張りのテーマ・ワールドの城にあまりいい印象は抱きませんでした。明らかに中世の本物の城とは違うキッチュな建物でしたし、なにより建設者が英雄になれなかった哀れな王様だったからです。
しかし40代になって再訪した時は全く違う印象を抱き、城から見える山岳風景や城内の焦げ茶色の板張りに落ち着いた佇まいを感じました。20代はローエングリンに共感する若者だった筆者も40代になると傷つき、苦悩するアンフォルタス王の気持ちに共感するようになっており、「英雄になれなかった哀れな王様」と見なしていたルートヴィヒ2世の無力感や逃避癖が理解できるようになっていました。一国の王でさえ思うように仕事ができず、夢とファンタジーの世界への逃避に救いを求めざるを得なかったのです。
今日、ノイシュヴァンシュタイン城を訪れる若者が抱くファンタジーは、男性であればローエングリンのような騎士の世界、女性であれば騎士を待ちわびるエルザのような姫君の世界でしょうか。心象風景ですから、老若男女、それぞれの願望や経験によって異なるファンタジー世界が見えてくる、それがノイシュヴァンシュタイン城の魅力です。
⇒後編:夢物語の世界に憧れた、孤独な王様の人生とは?現代人が共感できる「ファンタジー」としてのノイシュヴァンシュタイン城の魅力
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文:ドイツ観光局広報マネージャー・大畑悟
編集:Sitakke編集部・ナベ子
主要参考文献
ノイシュヴァンシュタイン城公式サイト