道の駅などに設置されている“地域限定ピンズ”。道の駅の案内板、各市町村のキャラクター、国道の標識といったラインナップの多彩さや、100円の低価格、そこでしか買えない希少性がコレクター心を刺激しています。
いつごろ発売され、どのくらいの種類があるのか。販売元に出向き、その謎を解明しました。
地域限定ピンズは、札幌の「アカシヤ物産株式会社(以下、アカシヤ物産)」が販売しています。土産物の卸として1975(昭和50)年に設立されました。代表取締役を務める林信任さんは、2007(平成19)年に、先代から会社を引き継ぎました。
1970年代の北海道土産は、木彫りの熊やペナントなどが主流。「先代のころと比べて、土産物も様変わりしました」と言います。
ピンズを扱い始めたのは、今から13年くらい前のこと。林さんの知り合いが細々と販売していたのを手伝うかたちで関わりを持ちました。
在庫を売り切って終わるつもりでしたが、たまたま東京で行われたギフトショーで知り合った台湾の会社がピンズに関心を持ってくれたことや、安価な販売機を斡旋してくれたこともあり、デザインをリニューアルしながら続けることにしました。
ラインナップの1つとして、道の駅の看板をピンズ化し、5つの道の駅にピンズガチャを設置しました。それが未来を切り開く要因となったのです。
「道の駅ではスタンプラリーを実施していますが、スタンプを押すことだけを目的に訪れるのであれば収益に繋がりません。もしピンズを集めることをラリーにすれば、少なくとも収益になる。これまで集客が少なかった道の駅に立ち寄るきっかけになるし、売り上げにも貢献できるかもしれない」
林さんはそう考え、全道すべての道の駅にピンズガチャを設置することを決意しました。
当時、道内に道の駅は約120箇所もありました。ピンズを作るにあたって、相手の承諾を得てから商品化するのが一般的ですが、林さんは商品を作ってから営業を開始しました。気軽に受け入れてくれる人ばかりではなく、ときには難色を示されることも。
それでも開始5年足らずで、目標だったすべての道の駅に設置することができました。
驚くほどのスピードですべての道の駅への設置を達成できたのは、「全部集めたい」というお客様の力だと言います。
1回100円というリーズナブルな価格や、そこにしか設置していないというプレミアムな感じがコレクター魂に火を付けます。コレクターの究極の目標はコンプリート。1箇所だけではなく、全種類をコレクションしたくなるのが性なのです。
ガチャの機械に『エゾックス』のブランド名が見られます。
「『アカシヤ物産』の名前を出したくなかったので、以前販売していた時計のブランド名を押し出しました」と林さんは言います。高級時計をオマージュしたダジャレだそうです。
2023年12月現在、道内に道の駅は127箇所ありますが、すべての道の駅でピンズを販売しています。
完全制覇を目指す『ガチャピンズラリ―』を実施し、達成者には完全制覇ステッカー&完全制覇ピンズをプレゼント。その栄光を公式ホームページに掲載するなど、コレクターの心を鷲掴みにしています。
「廃止になった道の駅も販売し続けてほしい」という要望を受けて、2022(令和4)年1月31日付で登録抹消になった「道の駅 足寄湖」のピンズは「道の駅 あしょろ銀河ホール21」内で販売を継続。同じく「道の駅 フォーレスト276大滝」は、2023年度の『北海道版ガチャピンズラリーコレクションフラッグ』に付属しています。
そのほかにも、国道の路線番号案内標識(通称おにぎり)ピンズ、市町村キャラクターピンズ、北海道花ピンズ、北海道魚ピンズなど、林さん自身も把握できないほど、たくさんのシリーズを展開。今では関東圏(千葉・山梨・群馬・茨城・埼玉・神奈川・栃木・長野)でもご当地ピンズが販売されています。
小さなカプセルに夢が詰まった地域限定ピンズガチャ。道の駅に立ち寄りながら、観光したり名物料理を味わったりする旅も楽しいものです。
「アカシヤ物産」の公式ホームページには、設置状況や品切れの情報も公開されています。100円玉を握りしめてドライブに出かけましょう。
<会社情報>
■アカシヤ物産株式会社
■所在地:北海道札幌市中央区南23条西11丁目3番3号
■電話番号:011-512-5883
■ホームページ:http://akashiya-bu.jp/