2023.12.26
深めるたとえば、てる子さんの場合は、このようになります。
「性自認」は、男性の矢印の右端に〇をつけ、男性性が強いことを表しました。
一方で、女性性もあるようです。
てる子さんは、「私は自分のことを男性だと思う気持ち自体には、あんまり違和感がない。でも、生活の中で女装もするし、自分の中にフェミ(女性)な要素があると思うので、そういう意味でこのくらい」と話します。
「戸籍の性別」は男性。
「性指向」は男性。
「性表現」は、男性性も女性性もありますが、女性性のほうがより強いほうに〇をつけました。
「私自身は格好やふるまいについては、普段から女装して、一種女性的なふるまいをしながらお仕事をさせてもらっているし、それが一番しっくりくるというか、これが私だよねって思うところがある。女性のほうの矢印はもっとガーンってつき抜けてもいいぐらい」
「普段からすっぴんでコンビニに行ったりする」こともあり、「男性としての性表現も自分の中で一種これが私だなって思いながらも、もっとしっくりくるのが女性性の表現」だといいます。
堀アナウンサーは、「自分の中の男性性、男性っぽさとか女性っぽさっていう表現でいいのかわからないけど、人それぞれ濃い薄いで内在しているということ?」と考え始めます。
てる子さんは、「そうですね。男、女って日常では当たり前にどちらかに〇をつけたり、名乗ったりしている人も、自分の中身をパッと開けてみると、どっちかに振り切れるものではないなっていうふうに思えるんじゃないかと思っているので、考え直しのいいきっかけにもなるんじゃないかな」と話します。
てる子さんは、男性で、かつ好きになる人は男性なので、自分のことは「ゲイ」の当事者と名乗っています。
「戸籍の性別」と「性自認」が男性で一致しているため、「戸籍の性別を変えたい」と思っているわけではありません。
そのため今回の裁判の争点の当事者となる「トランスジェンダー」には当てはまりませんが、「性表現」は女性性が強いので、ある意味「トランス」しているともいいます。
「男性」と名乗っている人の中でも、「ゲイ」と名乗っている中でも、4つの側面それぞれで見てみると、「グラデーション」があるのです。
てる子さんの説明を受けた後で、自分も図を書いてみたいと思っていた堀アナウンサー。
「すごい〇つけづらくなっちゃう、考えちゃう。いわゆる一般的な男性が好むものを、ぼくも好むかっていうとそうでもない自分もいたりするじゃないですか。そのゆらぎはそれぞれ多分ある」
てる子さんは、「そうですね。そのゆらぎを、なんとなくフタしちゃっても生活ができるっていうのが、やっぱりマジョリティー(多数派)の人たちの一種の特権性だと思う」と指摘します。
「ぼくもてる子さんのようなネイルとか本当はやりたいと思っていても、気持ちを抑えておこうかなって、例えばできるとする。でも、そういうところですよね」と思い当たった堀アナウンサー。
「『男だからこれはしない』『女だからこれはやっちゃダメ』って単純な男女の価値観にとらわれてしまって、人としての表現を自分でせばめてきたのかなって思ったりもしました」
てる子さん自身も、自分自身の「性」に悩んだことがありました。
「小学校・中学校からメイクはしてみたかったし、かわいい服も着てみたかった。『自分って男としてダメなんだ』みたいに思っていたし、さらに男の人を好きになったときに、『ますます男としてダメなんだ』っていう気持ちでいちゃった」
堀アナウンサーと泉記者も、書いてみることにしました。
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