2023.11.11
暮らす中川町に移住して、今年で9年目になる綾子さん。
「夜、ゴミ出しのため外に出たとき、ふっと空を見上げれば、満点の星空、運が良ければフクロウが上空を横切る。町中を歩いていれば、必ず知り合いに出くわし『こんにちは」』と笑顔を交わし、子どもの成長を家族のように喜んでくれる。夏には新鮮なお野菜の”交換こ”が行われて、冬には真っ白な雪に囲まれる世界がものづくりに集中させてくれます。ちょっと思い起こしただけでも、ここでの暮らしは豊かで幸せです」
綾子さんは、中川町の暮らしを、笑顔で振り返っていました。
「このまちにいると、満ち足りた気持ちになれる気がする」。
10泊11日のインターンを通し、ずっと私はそう感じていました。
このまちで暮らしていると、人の温かさや何気ない風景に、ふと心が動くことが多いのです。
インターン中にスタッフとして働いていたバーでは、お客さんとして来てくれた町民のみなさんが気さくに話しかけてくれて、私たち学生は、マニュアル通りに接客するのではなく、町民のみなさんとのおしゃべりを楽しむことができました。
また、週末に開催されていたマルシェで少し立ち話をした町民の方が、お店に来てくれて声をかけてくださったり、別で来店したお客さんたちがいつの間にか同じテーブルにいて輪が広がっていったり…そんな時の過ごし方に、私はとても心を動かされました。
普段、札幌では、このような時間の過ごし方を、私はしたことがありません。
もしかすると、忙しない都会で暮らす中で、こういった時間は、効率が悪く、”無駄”としてしまいがちなのかもしれません。
でも今回、中川町で過ごした日々と、綾子さんのお話が、私に気づかせてくれたんです。“無駄”とされがちな時間にこそ、面白さや価値があるということに。
流通用のきれいに整った木材から外れた“どんころ”も、ある意味、"無駄”と切り捨てられたもの。綾子さんがそんな”無駄”な木材に、価値を見出し、唯一無二の作品を生みだしていることに、私は心を打たれました。
やることが他にあるのに、ダラダラと時間を使ってしまったり、頑張ったのに努力が実らなかったりと、きっと多くの人の人生には、“無駄”だったなと思う瞬間があるはず。
でも、“無駄”を捨て置くのではなく、別の視点から見つめなおすことで、新たな価値を見出せることも、きっとある。
中川町で過ごした10泊11日間は、そんな一筋の希望を私に与えてくれた、とても豊かな時間でした。
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取材協力:木工作家・髙橋綾子さん
Instagram@ayako_works_
文:もんすけラボ(※) 学生メンバー みこと
編集:Sitakke編集部ナベ子
【もんすけラボ※】HBCと北海学園大学が2019年に開設した若年層向け協創型メディアシンクタンク「北海道次世代メディア総合研究所」の愛称。学生・教員とHBCスタッフがアイデアを出し合い、実践活動につなげています。