2023.11.01
深める晴花さんは、大学卒業後の進路を決めるタイミングも、「ふつう」より遅めだったようです。
大学4年生の9月、研究室の先輩に誘われて、知床の博物館のアルバイトに行きます。それが、初めての知床。1週間の滞在が、とても濃密で、「大阪とも札幌とも違う景色」に圧倒されたといいます。
その後、大学の就職課のメールの中に、知床でホテルを営む「北こぶしリゾート」の案内を発見。
パンフレットに書かれた「自然バカ募集」の文字に、「私のことだって思って!求められている気持ちになった」と笑います。
配属されたのは、レストラン。ビュッフェ会場でお客さんを席に案内したり、困りごとに応えたりする仕事を担当しました。
お客さんと「きょうはどこに行ったんですか?」など知床の話をするのも楽しく、スタッフ全員でオープンからクローズまで一丸となって過ごす日々が「部活みたいで、体育会系の熱い気持ちが出てきて」充実していたといいます。
2年が経ったころ、個人的に自然の勉強を深めたり、お客さん相手にクマの話をするイベントをしたりと、少しずつ自分らしさを求めていきました。
そして、ホテル全体へのモヤモヤも生まれます。
「このホテルって知床にあるホテルなのかなって、疑問に思っていたんです」
世界遺産であり、その雄大な自然に惹かれたはずの観光客が集まる、知床。「知床自然センター」では買い物をしてもレジ袋はないのがずっと当たり前で、環境を大事にするまちです。
一方で、ホテルに一歩入れば、アメニティも、水や電気も、使い放題。ビュッフェでは好きなものを好きな量だけ取れるはずなのに、毎日大量に出る食べ残し。「同じ知床なのに、ホテルの中と外の差ってなんだろう」という違和感は募っていきました。
入社3年目の11月、晴花さんはその想いを、役員に直接訴えます。
役員は、1時間ほど、対等な立場で話を受け止めてくれた上で「来年60周年になるので、地域への恩返しになる、SDGs活動を考えている」と教えてくれました。
それが「クマ活」。
知床財団とも協力して、クマを住宅地に寄せ付けないための草刈りやゴミ拾い、クマについて考えるワークショップをする活動です。
晴花さんがお客さんにクマの話をしていることは、社内でじわじわと広がり、役員にも届いていました。
そこで、役員は「クマ活にぜひ関わってほしいと思っている」と話してくれたといいます。
そのわずか1か月後に、「経営戦略室」への異動が決定。
2020年1月、60周年の節目が半年後に迫る中、「クマ活」への挑戦がスタートしました。