2023.10.27
深める2012年、友人に「泊まりたいユースホステルがある」と誘われて訪れた、島牧村。
海にも山にも恵まれ、田んぼや畑での農作業も、釣りも、登山もでき、冬にはまだ誰も登っていない氷瀑が現れてアイスクライミングが楽しめる…。
吉沢さんから見ると、「生活のすぐそばに楽しめることがあって、食べ物もあって、すべてが完結できる場所」でした。
隣の黒松内町の自然学校で働きはじめ、島牧村にも通ううち、2013年の冬、29歳で結婚したのが、吉沢俊輔(しゅんすけ)さん。「島牧ユースホステル」を経営する男性です。
俊輔さんとの結婚は「運命」と感じているという吉沢さん。
結婚には「興味がなかった」のに、「決まっていたこと」のように導かれ、島牧村に移り住んだといいます。
2018年、島牧村が連日、全国のニュースに出るようになりました。「クマ騒動」です。
島牧村では、この夏、連日住宅地にクマが現れ、庭や小屋を荒らしました。
今や札幌でも住宅地にクマが出没する事態になりましたが、吉沢さんはこのときから、「クマ騒動」は島牧村だけの問題ではないと気づいていました。
それは、これまで短期で重ねてきた「幅広いクマ対策の経験」があったからです。コンプレックスだった履歴書を「必要だったことをやってきたんだ」「だから私は島牧村に来たんだ」と受け入れられたといいます。
島牧村だけでなく、「全道のクマ対策を変えたい」と考えた吉沢さん。翌年から、娘のはるちゃんを連れて引っ越し、クマ対策に先進的に取り組んできた「知床財団」で短期職員として学ぶことを決めました。
夫のいる島牧村と、知床との2拠点生活を選んだ吉沢さん。
「本当はもっと子育てに時間をかけたい。ユースホステルの仕事も一緒にやりたかった」といいます。
しかし、「クマとヒトとの付き合い方」は、「仕事」や「好きなこと」というより、「志事(しごと)」だと感じていて、我慢することはストレスでした。
大好きな島牧村と、父親と離れて、さみしいはずのはるちゃん。
しかし、
「かあちゃんはクマ対策の人だからね」
「はるもがんばるよ、かあちゃん応援してるよ」
と声をかけてくれるといいます。
はるちゃんは最近、「クマ対策は人間対策だからね」と話すそう。クマを引き寄せるゴミを率先して拾うなど、吉沢さんの一番身近で、「クマとヒトとの付き合い方」を学んでくれています。