その登場はあまりに鮮烈だった。
ルーツを辿れば1950(昭和25)年、札幌・狸小路に始まる『満龍』の歴史。
以前、弊誌でもその複雑な系統図を整理して掲載したことがあったが(※vol.73にて)、1970(昭和45)年に函館に進出した満龍が、この街で不動の地位を築くきっかけとなったのが「みそカレーラーメン」だ。
1970年代、湯川店に出入りしていた中高生の常連達と店による実験という名のお遊びから誕生したこのメニューはまたたく間に大ヒット。
その満龍のみそカレーラーメンをベースに、青森で独立した創業者の親族がアレンジを加えて広めたのが「みそカレー“牛乳”ラーメン」。
函館においては1980年代から五稜郭店(2010年に閉店)で提供され、地元の学生や観光客に大ウケし、満龍の新しい看板品となった。
当時、このメニューをよく食べた人の中には納豆のトッピングという飛び技にハマった人も多いだろう。
現在、満龍の看板を掲げる唯一の店である深堀店では、五稜郭店の閉店以来ずっと封印されていたこのメニューを数年前に復刻。使用しているどんぶりも当時五稜郭店で使われていたものだ。
なけなしの小銭を握りしめて暖簾をくぐった学生時代や、夜遊びの〆に立ち寄った若き社会人時代など。一口すすれば、それぞれの記憶がよみがえる特別なラーメンである。
北海道函館市深堀町31-54
0138-56-8055
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『peeps hakodate』vol,118「どうか変わらず、ずっとそのままで。函館グルメ遺産」より
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