およそ70年間、五稜郭の真ん中にある老舗の餅屋『餅の北屋』の店頭に並べられてきたおいなりと赤飯を一言で表現するなら、「奇をてらわない」の一語に尽きる。
ずしりと重いおいなりは「先々代が店を創業して以来、味付けは変わってないです。気をつけてることといえば、前日から漬ける揚げの味が濃くなり過ぎないようにすることかな。タレはずっと継ぎ足して使ってるからね」と語る3代目店主の松下文彦さん。
赤飯もおいなり同様、創業以来レシピを変えることはなく長年親しまれてきた。この赤飯だけを毎週のように買っていく常連もいる。
持ち帰る前にごま塩をかけてくれるので、ご飯と小豆の甘さが際立ち、おかずがなくてもどんどん箸がすすむ。米の炊き加減もちょうどよく、噛み応えも心地いい。
赤飯といえばハレの日の料理の代表格だが「ひと昔前なら、運動会なんかのイベントの日にはたくさん注文が入って大変だったんだけど、今はそんなこともないかな。常連さんが街を離れることも増えてきたし、赤飯に関しては4代目への継承はないかもしれないな」
さまざまなものが変化していく中、ずっと変わらずにいることがいかに大変なことかは想像に難くない。それでも、無理を承知で願わずにはいられない。
ずっと永く、そこで変わらない味を提供してほしいと。
北海道函館市本町25-12
0138-52-2212
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『peeps hakodate』vol,118「どうか変わらず、ずっとそのままで。函館グルメ遺産」より
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