笑顔や話し方が、優しくて穏やかなみゆきさん。さらにまなざしはとてもしっかりしているところが、ちかさんにとても似ていると感じました。
みゆきさんは、ちかさんを産んですぐに離婚しているため、母と息子の「二人三脚で生きてきた」といいます。持ってきてくれたアルバムをめくりながら、「小さいときは目に入れても痛くない成長ぶりでした」と話す顔は、自然とほころんでいました。
「息子が好きになるのは男性だ」と感じたのは、ちかさんが小学校高学年くらいのとき。頻繁に家に遊びに行く同級生の男の子を「大好きだ」と言っていて、「男友達としてだけじゃなくて違う目線で見ているかなと感じた。なんか真剣さが違っていた」と振り返ります。
みゆきさんは、小学生のちかさんをよく自分の職場に連れて行っていましたが、同僚から、ちかさんが話すときの手つきが「女性らしく」、「大きくなったらそっち方面の店で働くんじゃない?」と言われたといいます。それをみゆきさんは、懐かしい思い出話として振り返っていました。「それならそれで、ナンバーワンになってもらわないと困るわ!」と笑って返していたといいます。
みゆきさんは、「まわりの男の子と違う」と気にするのではなく、ちかさんの個性を丸ごと自然に受け止めていたのです。
ちかさんが20歳の頃、「彼氏に会いに行く」と言われたときも、「不思議じゃなかった」といいます。
なかなか受け入れることができない親もいる一方で、みゆきさんがちかさんの個性を自然にとらえているのは、どうしてなのか…。
「なぜ偏見を持たなかったと思いますか?」と単刀直入に聞くと、みゆきさんは少し悩みながら、ぽつりと答えました。
■こころが男性どうしのふうふと、新しい命を見つめた連載「忘れないよ、ありがとう」