妊娠がわかったのは、結婚してから3か月後。2人は、病院で撮ったばかりのエコー写真を見せてくれました。
ちかさんは「自分は率直に喜んだ。楽しみです」と話していましたが、2人の表情は緩むことがなく、特にきみちゃんは、少しだけかたいように感じました。
きみちゃんは過去にホルモン治療を受けていたため、子どもを授かるにはまだ時間がかかえると考えていました。そのため、想定していたよりも早く妊娠したことに、「正直、戸惑った」と話しています。
「自分自身が世間の目で苦しんでいるから、この子も正直、苦労する可能性が高い」。伏し目がちに話すきみちゃんのことばを、ちかさんはうなずきながら聴いていました。
「でも、それも一緒に乗り越えていけたらと思う」。ことばを選びながらゆっくりと話すきみちゃんからは、お腹にいる赤ちゃんへの確かな愛情と、2人で子どもを守り育てていく強い決意が伝わってきました。
ひとつの新しい家族のカタチを見せてくれる2人の取材を通し、わたしは、どんな分厚い参考書を読むよりも抱えきれないほどの多くのことを学びました。
新しい命がお腹に宿ったことを喜び、慈しむことに、性別による縛りはない。2人の取材をもとに感じたことを、これからしっかりと綴っていきたいと思います。
連載「忘れないよ、ありがとう」
文:HBC報道部・泉優紀子
札幌生まれの札幌育ち。道政・市政を担当しながら、教育・福祉・医療に関心を持ち、取材。大学院時代の研究テーマは「長期入院児に付き添う家族の生活」。自分の足で出向き、出会った人たちの声を聞き、考えたことをまとめる仕事に魅力を感じ、記者を志す。居合道5段。
■こころが男性どうしのふうふと、新しい命を見つめた連載「忘れないよ、ありがとう」