2023.09.26
暮らす「天気を味方にすると、暮らしはもっと快適になる!」をテーマに、毎日の生活に役立つお天気情報の”見方”を気象予報士がお伝えします。
記録的な猛暑の夏もようやく落ち着いて季節が進み始めました。
ただし、秋は大雨の季節です。前線や台風の影響で大量の雨が降って、北海道も何度も洪水被害に見舞われています。
そこで、今回は、風水害から命を守るために知っておきたい用語の解説をランダムに、最新の事情を反映した解説を行っていきたいと思います。
▶「記録的短時間大雨情報」
「記録的短時間大雨情報 〇〇町 100ミリ(1時間雨量)」のような速報を見聞きしたことはありませんか。ちなみにこの「記録的短時間大雨情報」、長い言葉ですので私たち予報士の間では「キロクアメ」と略して呼んでいます。
気象庁がこの情報の運用を始めたのは1986年のことです。どのような時に発表されるものかといいますと、ある地域に大雨警報が発表されている状況で(この段階ですでに危ないのですが)、その地域にとって、土砂災害や浸水、洪水などの災害につながるような稀にしか観測しない雨量が降った時に発表されます。
その基準となる雨量は、その土地の歴代1位か2位の記録を参考に決められていて、1時間雨量で100ミリ前後の猛烈な雨であることが多いです。文字通り記録的な大雨です。
ちなみに、ちょっと細かい話になりますが、「記録的短時間大雨情報」の中には「約100ミリ」のように、数字の前に”約”を付けて発表されることがあります。この場合の雨量は、アメダスなどの雨量計で実際に観測された雨量ではなく、「解析雨量」といって、気象レーダーと周辺の雨量計を組み合わせた分析で得られた推定の雨量を意味しています。このレーダー解析という手法を使うことで、アメダスが設置されていない地域にもこの情報を出すことができるのです。
さて、「大雨警報」は、大雨の“予想”ですが、この「記録的短時間大雨情報」は数年に一度程度しか降らないような大雨が“実際に降った”ことを伝えるものなので、事態はより切迫しています。実際、この記録的短時間大雨情報が発表された後で浸水や土砂災害などの災害が多く発生しています。この情報が出たら、付近の住民は警戒レベル(避難情報)発表のあるなしに関わらず、自発的に避難行動を取るなど適切な判断が必要になってきます。