2023.09.28
暮らす2年前の9月6日、「里塚地区」。復旧工事の完了を記念する式典に、1人の男性が参加していました。
「落ち込んだ心を少しでも手助けというか少しでも寄り添えたらなと」と話していたのは、伊藤組土建で地盤工事の事務所長を務めた、馬場秀貴さんです。
馬場さんは週に1度、工事の内容をわかりやすく伝える「里塚復旧工事通信」を発行していました。
「堅苦しくなっちゃうと仰々しくなっちゃってあまり見てもらえないかなと」と話していた馬場さん。
当時の復旧工事通信には、「サンタクロースが現場に登場。西本サンタと林トナカイが現場周辺を練り歩く」と書かれています。
被災によりバラバラになりそうな住民たちをつなごうとする、馬場さんの姿。
市が設置した復旧推進室に最年少で配属された藤永さんの心も、突き動かしました。
「自分の利益のためにやっていないと思う。僕より公務員向いてるんじゃないかって思った」
しかし、今年6月。
馬場さんは、子どものスポーツ大会に向かう途中、自転車事故で死去…。
45歳でした。
町内会長の盛田さんも、まるで地域の一員のように住民に寄り添う馬場さんの姿が強く記憶に残っています。
「町内会に対する行事だとかそういったことへの応援というか、それがすごく印象に残っているんですよ。だからよくやってくれた。要するに仕事以外ですよね、はっきり言って」
今年5年ぶりに開催した夏祭りには、「里塚復旧工事通信」の最新号を発行。
馬場さんの訃報を伝えるとともに、藤永さんはコラムにメッセージを寄せました。
「馬場さんからおすそ分けしてもらったこの愛を大切にしながら、今後の人生、一歩ずつ進めていくことが馬場さんへの恩返しだと思っています」
そんな藤永さんが、取材の最後に、ずっと気にかけていた本音を漏らしました。
「ようやく忘れることができた被災者の人がいると思う。嫌な気持ちを放送で思い出さなきゃいいなって、正直ちょっとだけ思っている」
単に、マチの見た目を元通りにするだけが、復旧ではない。
住民を思う馬場さんの心は、次の世代に着実に引き継がれています。
取材でお話を聞いた方々から、「三位一体」という言葉をよく聞きました。
それだけ地域のみなさんが、お互いを支え合いながら復旧してきたことがよくわかります。
特に被害の大きかった地域の人にとっては、心落ち着かない、思い出したくない話題かもしれません。
その気持ちを知った上で、HBCでは、次の災害に備えるためにお伝えしています。
胆振東部地震から5年。道内各地の今や、これからの防災に関する情報は、Sitakkeの特集「秋冬のじぶんごと防災」でお伝えしています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容はHBC「今日ドキッ!」放送時(2023年9月6日)の情報に基づきます