2023.11.05

暮らす

「自分の変化にふさぎこまないで!」更年期による不調との上手な付き合い方

やる気にならない、イライラする

更年期女性の多くが、落ち込みやイライラを経験します。これは、急激なホルモン変動の影響が大きいといえます。それに加えて、この年代の女性を取り巻く環境が変化することも影響しています。子どもの巣立ちや夫の定年、親の介護などは昔から変わらずですが、晩婚化の近年では、女性の更年期と子どもの思春期が重なることもあります。また、仕事をする女性が増える中で、職場でより責任のある立場につく時期となることもあります。身体の変化に加えて、こうした環境の変化によるストレスが、精神症状につながることが多くみられます。若いころは、体力でなんとか乗り越えることができたものも、なかなか同じやり方では乗り越えることが難しくなってくる年代です。今の自分に合った対処方法を模索する必要があるのです。

過去の出来事を思い出して辛くなる

ずっと昔のこと……たとえば子ども時代に母親にいわれた一言、産後に夫にいわれた一言を思い出して、悲しくなったりイライラしたり、ということが起こりやすくなる時期でもあります。「もう過去のことなのに」と思う必要はありません。まだあなたの中で消化できず、過去になっていないからこそ思い出し、辛い気持ちになるのです。当時は向き合えなかった気持ちにゆっくりと向き合い、自分を癒してあげることが必要なのです。

更年期をどう過ごすか

更年期はその後の人生を豊かに生きていくための準備期間ともいえます。仕事や子育てに追われる中で少し立ち止まり、自分に向き合い、いたわる時期です。先にも述べた通り、これまでとは少し違う対処方法を身に付けていくことも求められます。人は日々変化しています。毎日変化しているからこそ、その変化になかなか気づきにくいのですが、この時期にきちんと向き合って、自分への理解を深めることが非常に大切なのです。

対症療法として、ホルモン補充療法や漢方薬、場合によっては睡眠薬や抗不安薬などの利用も一時的にあってよいと、筆者は思います。急激な変化に身体も心も慣れる時間が必要なのです。

「更年期ってなんだか嫌だな……」と思っている方も少なくないとは思うのですが、女性ははっきりとした更年期がある分、自分の変化を自覚し、修正するきっかけを意識しやすいともいえるのです。男性にも更年期はあるのですが、ホルモン変化が緩やかであるため、自覚しづらく、実年齢に見合った自己理解の修正が難しいといわれています。

健やかな更年期を過ごすため、今の自分をありのまま味わってみましょう。今後の人生をより豊かにするために、誰かのためではなく自分のために過ごしましょう。その日、そのときに自分がやりたいことを優先する、そんな日を作ってみることもおすすめです。
何がやりたいのかわからないと焦って、「新しい趣味を探さなくては……」などと気負う必要はありません。
家族のことも、友人のことも、カロリーのことも、金額のことも考えず、食べたいものを食べる日を作る。そういうことから始めてみましょう。自分がどうしたいのかわからない、自分が好きなことがわからない。そういう人は、これまで周りの人のために一生懸命に生きてきた人です。

そろそろ自分のために、自分がやりたいことを大事にして生きて。

辛い症状かもしれません。でも、更年期症状はそれまでがんばってきた女性たちに、そうメッセージを送ってくれているのではないかと思います。

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文:竹原久美子(公認心理師/婦人科クリニック勤務)
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【ライター:竹原久美子 PROFILE】
中学時代、寄り添ってくれる人の大切さを感じ、心に寄り添う仕事につくことを決める。
「人生の始まる現場で学びたい」と産婦人科での実習を希望し、そのまま、産婦人科で女性の心に寄り添い続けてもうすぐ20年。
土地柄を肌で知っていることは心の理解にも役立つという想いで、地元札幌で臨床に携わり続けている。

【画像】Luce、マハロ、タカス、kouta / PIXTA(ピクスタ)

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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