2023.09.15
深める岸田総理は「異次元の少子化対策」を掲げていますが、子育ての現場はどうなっているのか。
眠らない街、札幌・ススキノにほど近い、24時間営業の保育園に密着すると、その課題が浮き彫りになりました。
連載「じぶんごとニュース」
金曜日、多くの人がマチに繰り出すススキノ。
そこから1キロほどの場所にあるのが、認可外保育施設「ペンタゴン」です。
生後5か月から小学6年生までの子どもを24時間預かっています。
午後5時半、普通の保育園ならお迎えの時間ですが、ここでは子どもの預かりのピークです。
保護者の仕事は、会社経営者や接客業などさまざま。
「時間を気にせずに働けるのでありがたい」と、午前4時のお迎えまで、急いで仕事に向かっていきます。
ペンタゴンの利用者の一人は、札幌でカレー店を経営しながら、一人で8歳の娘を育てています。
「飲食店なので、片付けなどで夜遅くなってしまうこともあるのですごく助かっている」と話していました。
ペンタゴンを運営する小向叶ノ音(かのん)社長が「24時間保育園」を作ったのは、自らの子育て体験がきっかけだったといいます。
「出産したときに、身内も近くにいなくて、友達もいなかった。育児で本当に疲れても預ける先が全然なくて、自分で保育園をつくれたらいいなと」
子育ても、仕事も、ともに大切にしたい。
それは夜に働く人でも同じ。
この保育園が支えているのは、そんな人たちです。
しかし、課題もあります。
それは運営にかかる「お金」。
ペンタゴンは24時間の「認可外」保育園になるため、補助金もなく、保護者が納める保育料のみで運営をしなくてはなりません。
従業員の給料、子どもたちのおもちゃや教材費は、系列保育園の売り上げや、寄付でカバーしているのが現状です。
しかし、認可を受けると、保護者の中には自治体の基準を満たせず子どもを預けられなくなってしまう人もいます。
そのため、認可外のまま運営を続けています。
午後7時、これから仕事に向かう保護者が子どもを預けにきました。
この保護者はススキノのキャバクラで働いていて、お迎えは夜中の3時くらいだといいます。
「私たちの生活に合わせて3時に1回起こしちゃうので、子どもが夜型に近くなっちゃっているのは申し訳ない」とジレンマを話してくれました。
保育園の夕食の時間は午後6時ですが、預かる時間によっては遅くに食事をとる子もいます。
夕食後は子どもたちが大好きな自由時間。
1日を通して子どもが常に30人から50人いる中、保護者の送迎の対応もするため、先生方は大忙しです。
夜勤などもある看護師の保護者は「普通の保育園だと間に合わない。こういうところがないと仕事ができないですね」と話します。
午後8時、そろそろ寝る時間ですが…
保護者の生活リズムと同じ生活で「夜型」になっていて、なかなか寝付けない子どももいます。
午後10時、保育士がなんとか子どもたちを寝かしつけました。
別々の時間に登園するイレギュラーな保育が多い中、大事にしているのは「それぞれの生活リズムで楽しく過ごせる環境づくり」です。
小向叶ノ音社長は「やっていることは認可も、24時間の保育園も同じで、保育の基準も同じ。そこに補助金を認可と同じように出してもらうことで、もっと子どもたちの教育や、お母さんたちの支援につなげられる」と行政の支援の必要性に触れました。
午前3時、仕事を終えたお母さんが子どもをお迎えに。
男の子にとって特別な日。
日付が変わったこの日が、2歳の誕生日です。
帰り道、お母さんの笑顔と拍手を受け、手をつないで帰っていきました。
困っている保護者を救いたい。
ペンタゴンの明かりは消えることなく、今も子どもたちを照らし続けています。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年8月29日)の情報に基づきます。
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