2023.09.11
深める8月、お盆のお墓参りや実家への帰省をした方も多かったのではないでしょうか。
久しぶりにゆっくり親と話す機会に、ふと、家族の老後や今後のことが頭をめぐりませんか?
「終活」という言葉がめずらしいものではなくなった、人生100年時代の今。
大切な人だからこそ、「最期」や「いなくなったあと」を想像することはどうしても後回しにしてしまいがち…。
だけど、大切な人だからこそ、大切に考えたい、大切なことが「終活」には詰まっています。
連載「親の「終活」について考える」では、Sitakke編集部も自分事で「親世代の終活」に向き合います。
「終活」=人生の終わりに向けての活動。
2010年には「現代用語の基礎知識」に登場するようになった言葉です。
なんとなくイメージすることを、ざっとSitakke編集部でも上げてみました。
・延命措置をどうするか…など医療面の意思表示
・介護や施設入所の準備
・通帳の整理や保険証券、不動産など財産・相続に関わること
・家の片付け・整理
なんてことでしょうか…。
「一体どこから始めればいいんだろう…」
「お金の問題は難しそう…」
「法律ってどうなっていたっけ?」
と、正直、出だしからちょっと二の足を踏んでしまいます。
こんなとき頼りになるのが、専門家のアドバイス!
Sitakkeでは、道内各地で「終活」に関するセミナーなどを行う、 「終活マイライフ」 に疑問のすべてをぶつけ、答えていただきました!
「終活マイライフ」は創立7年を迎えた道内の一般社団法人。
終活カウンセラーの資格をもつ5人の理事と、司法書士で相続知財鑑定士でもある監事が所属しています。
それぞれに社労士や社会福祉士、冠婚葬祭アドバイザー、エンディングノート書き方講師、生命保険支払専門士などの資格も持っていて様々な相談にのってもらえます。
まず訪ねたのは、終活マイライフの理事の中でも札幌を中心に活動している 熊崎梨絵 さん。
社労士や介護支援専門員の資格を持っています。
終活カウンセラーになったのは8年前。
札幌の地下歩行空間で「終活イベント」が行われていたところにたまたま通りがかり、自分で声をかけたことがきっかけでした。
当時は、不動産会社で働き、高齢者住宅の紹介もしていたので、「終活」が仕事に役立つかもと考えたのだそう。
でももうひとつの理由は「直感」。
終活カウンセラーになったこと、そして相談に来られた方に伝えたいことのベースには自身の死に関する体験が大きく関わっているといいます。
私自身15歳のときに大切な人を亡くしました。
まだ11歳の弟でした。
脳腫瘍という病気で、発覚からわずか4か月。本当にあっという間でした。
死というものがすごく身近にあるものなんだということを感じたんです。
弟はどんなことをしたかっただろう。
そのために自分はどんなことができただろう。
もっと優しくすればよかった…
大切な人との突然の別れは、年数がたてばたつほどまたぐるぐるといろいろなことを考えます。
27年がたった今も、私は後悔しながら弟にしてあげたかったことを考えています。
そして、本来の「順番」なら先に逝くはずの父や母が、突然わが子に先立たれたその姿も間近に見てきました。
泊まり込みで弟の看病をしていた母も、私と二人で留守を守っていた父も、本当につらかったと思います。
父は、きっと治ると信じていたのでしょう。職場にも一度も息子の病気については話さなかったようです。
母は、私が大人になってからようやく、ポツポツと、弟が当時「何度も吐いてしまうのがかわいそうでつらかった」など少しずつ話してくれるようになりました。
そんな経験があって、「終活」に対する思いはずっと心の中にあったのだと思います。
「終活」で私が一番伝えたいことがあります。
それは、 元気なうちに始める こと。
実は「終活」って「死に向かうため」の活動ではないんです。
これから自分はどうしたいか。どんなことをして楽しみたいか。
どんなことが幸せか。
「これから」「未来」を考える ことそのものなんです。
高齢の方だけのものでもなければ、死が迫った人が考えるものでもない。
私たちみんながやった方がいいことなんです。
特に、 新婚のカップルにこそ 「終活」をおすすめしたいと思っています。
実は夫婦であっても意外と、お給料や保険などお金のシビアな話ってちょっとしにくかったりしませんか?
「終活」をきっかけにお互いの考え方のすり合わせもできますし、それこそ夫婦・家族の「これから」が同じベクトルをむいて見えてくるんです。
Sitakke読者世代のみなさん(私自身もそうです!)も、親に「終活」を進めるのはなかなか言葉をどう切り出していいか悩むかもしれません。
だから、もう 自分がまず「終活」を始める!
「一緒にやってみない?」と誘ってみる ところから始めてみませんか。
では、どこから始めればいいのか。
おすすめなのはやはり 「エンディングノート」 を書き始めること。
エンディングノート自体は、本当にお好みのもので大丈夫ですよ。
「終活マイライフ」でもオリジナルの 「みらいノート」 を製作しています。
「エンディングノート」ときくと、なんだか悲しい感じがしますよね。
でも、終活って、これからの 未来の自分やまわりの人たちが「どんなふうに生きていくか」 を考えることとイコールなんです。
市販のエンディングノートを書く時も、そんな前向きな気持ちで書いてもらえればいいなと思います。
エンディングノートは、 書きたいところから、書きたいことだけ、書きたいだけ 書いてOK。
パラパラめくるだけで、「こんなこともこれからを考えるために必要なんだな」って意外な発見もあるかもしれません。
例えば、スマホやパソコンのデータはどうするか、SNSのアカウントはどうするか…なんてことは現代ならではの考えるポイントですね。
一方で、何でもかんでも考えなくても大丈夫。
ここはわからないな、今はピンとこないなと思ったらそのときは飛ばしたっていいんです。
ノートを選ぶポイントをあげるとすると 「自分年表」 がついているものがおすすめです。
特に男性は、こうしたノートで自分の思いや希望を書き始めること自体に抵抗を感じてしまいがち。
だけど、単純に自分がいつどんなことをしてきたかを並べる作業からなら抵抗なく入りやすいです。
何年に中学に入学し、いつ就職したか。
そんな単純なことを書くだけでも、そのとき自分が何を考えていたか、どんなことに夢中になっていたか、記憶の引き出しをあける大きなきっかけになるんです。
そこには、自分の「これから」を考えるヒントがたくさん隠されています。
親の年表をのぞきながらわいわい昔話をする中で、そんな「これから」の輪郭が少しずつ見えてくるはずです。
・「終活」は親世代のものだけにあらず。「自分ごと」で一緒に始めてみる
・「終活」は死ぬためではなく「これから」を考えるもの。
・第一歩は「エンディングノート」から。書き出すことでまずは自分の考えを整理してみよう。
今回は、「終活」って結局何だろう?という考え方から整理してみました。
次回からは、介護・医療・相続…などなど、具体的に気になる疑問をどんどん解決していきます。
実は、北海道ならではの事情から来る特徴的な相談もあるのだとか。
連載「親の「終活」について考える」は月2回更新予定です。
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