8月8日、夏休みまっただなかの小中学生を集めて開かれたのは、 「起業」を疑似体験 できるイベント。
北海道大学などが主催し、小中学生50人が参加しました。
商品開発からはじまり、事業計画を練り上げ、資金調達の交渉も行う…
事業の流れを一連で体験していきます。
こうした取り組みは 「アントレプレナーシップ教育」 と呼ばれています。
直訳すると 「起業家精神」 。
実は海外ではもう、教育指導要領に組み込まれるほど、一般的な教育概念なんだそうです。
北海道大学が今、率先して「アントレプレナーシップ教育」に取り組むその狙いと、そこからみえる北海道の未来は…
北海道大学産学・地域協働推進機構でアントレプレナー部門の副部門長を務める 椎名希美特任准教授 にお話を聞きました。
アントレプレナーシップは 「起業してください」という勉強ではない 、というのをまず第一にお伝えしたいです。
起業家はいちから事業を起こしていく道ですよね。
アントレプレナーシップには、そこに至るまでの、創造性やリスクがあってもチャレンジする姿勢、変化し続ける状況からチャンスや課題を見つける力などを広く含めた意味があります。
それはつまり、あらゆることに通じる 「生きる力」 そのものです。
では、具体的にどんなことを行うのか。
もちろん知識を身に着けるような「座学」もありますが、今回のイベントのようにゲーム感覚で学ぶワークショップ形式のものが多く「体験」を重要視しています。
少し意外かもしれませんが、「スポーツ」もすごくアントレプレナーシップを学ぶのにいい材料になるんです。
スポーツは究極のチームワークを必要としていたり、調整力が求められたりしますよね。
目標設定をして、チームでの協力のしかたを考えて…一度そうして試合をやってみたあとに、もう一度みんなで考えてからさらに試合をする。
そして変わったかどうかを振り返る、というのもまさにアントレプレナーシップを体験・体感してもらいやすい取り組みかと思います。
社会で新しい何かを始めようというとき、日本に今圧倒的に足りていないのは 「自信」 と 「挑戦心」 です。
海外の調査では(GEM調査2022年)、「自分にビジネスを始めるスキルと経験がある」と答える人の割合は、日本は20%以下とダントツの最下位…(1位のサウジアラビアは約90%)。
さらに、「ビジネスチャンスはあるが、失敗を恐れて行動していない」と答える割合は50%を超えるという結果が出ています。
これは、世界から見て率直に「やばい」状況だといえます。
ただ一方で、「起業してみたい」と思った人の中で実際に起業している割合をみると、実は低くないんです。
何が言えるかというと 「自分にはできる」 と思ってもらえれば、何かを作り出していけるということなんです。
「自信」と「挑戦心」の育成が今求められていることだといえます。
「自信」と「挑戦心」を育成していく、いちから何かを創造していく力を育むにはやはり、早い方がいいというのは言えると思います。
何かにいっぱい挑戦して失敗もして…という体験はより低い年代から重ねていくことが大事。
特に小中学生は「失敗を恐れる」ということがまだ少ない年代なので、そのときから繰り返し、「失敗しながら創り出す」という創造性を育むチャンスなんです。
そして、北海道大学は、この地域の基幹大学。
12学部19学院で多くの人材育成、 人材輩出をしていくこと に主軸をおいています。
ですが、今や入学者の7割が道外の出身で、卒業すると一部の学部では9割もの人が道外に流出している現状があります。
北海道のこれからの経済を担っていく人材を北海道から輩出しなければいけない。
10年後の世界を担う人材を北海道で育成する というのは命題としてもっています。
そのために、北海道大学として、今専門性をもって学んでいる大学生だけではなく、もっと先の未来まで考えて、子どもたちへのアプローチを強化しているわけなんです。
そして、北海道はやはり、ほかの地域に比べて圧倒的にこうしたワークショップや企業の話を聞く機会も少ないのが現状です。
要は、 「世界が狭くなりがち」 ということ。
そこを広げる機会を私たちが作ることが大事だと思っています。
今回は1日で行ったイベントでしたが、例えば合宿形式でのワークショップもこれから取り組みたいと考えています。
あとは、海外に行ってみたり…。
また、子どもたちの「世界を広げる」ということでは国内のほかの地域と連携してみるのも大きな刺激になると思います。
北海道の子どもたちが、東京のスタートアップ企業を訪れてみるのも面白いですよね。
また「海を隔てた端っこ同士」ということで、沖縄県の子どもたちは環境は違えど、風土は似ているところがあるので、連携してワークショップに取り組んだり。
沖縄は外国の方も多いので、「国内留学」のように全編英語でワークショップをやってみるというのも考えています。
誤解しないでほしいのは、じゃあ小さなころからアントレプレナーシップ教育に触れていないと「手遅れ」になるのかというと、そんなことはまったくありません。
高校生や大学生は自分の将来や進路を自分事として考える時期ですよね。
だからこそ、アントレプレナーシップのワークショップなども、より具体的に自分とつなげて考えることができるという側面もあります。
偏差値だけではなく、将来にいろんな選択肢があって、自分で好きなことを見つけていいんだと感じてもらえると思います。
後編では、今回のイベントで利用された教育プログラム、「アントレクエスト」を開発した「起業家」でもある札幌出身の福永祐作さんに、自身の体験から見えたアントレプレナーシップの意義と地元北海道へのメッセージについて伺っています。
▼「起業家にならなくたっていい」札幌出身の起業家が伝える「本当の」アントレプレナーシップ
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聞き手・文|Sitakke編集部あい
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