8月8日、夏休みまっただなかの小中学生を集めて開かれたのは、「起業」を疑似体験できるイベント。
北海道大学などが取り組む 「アントレプレナーシップ教育」 の一環です。
いったいなぜ、子どもたちに「アントレプレナーシップ教育」が必要なのか。
前半では主催した北海道大学に、その狙いと将来性を聞きました。
▼知ってる?アントレプレナーシップ教育 北大が伝授!子どもたちに「挑戦」と「自信」を
このイベントで使われたアントレプレナーシップ教育プログラム、その名も 「アントレクエスト」 を開発したのが「Armory(アーマリー)」。
大阪に本社を置く会社ですが、代表を務めるのは札幌出身の 福永祐作さん です。
大学時代に自らコミュニティ事業で「学生起業」しました。
そんな福永さんに、「アントレクエスト」を生み出したきっかけ、注目する「アントレプレナーシップ」の意義、そして故郷・北海道への思いを伺いました。
私たちが開発した「アントレクエスト」はまさにビジネスを 「体験」 することを通じて 主体的に挑戦 していくプログラムです。
その名の通り、8つの「章」をクリアしながらバッチをゲットするRPGのようになっています。
「起業を学ぼう」と投げかけられるのってハードルが高いですよね。
だから、ゲームを遊びに来た感覚で来てもらって、結果的にアントレプレナーシップが身についていた、というくらいにしたかったんです。
「資金調達の章」「販売の章」「決算の章」など進むクエストは実はとても”リアル”。
「起業家になる」のではなく、事業を一連の流れで体験することで物事の全体像が見えるようになることが狙いです。
全体が見えることで、どんな会社のどんな部署で働いても、自分の仕事の意味や役割が見えてくる。
それが自分の『軸』になります。視野が広がってきますよね。
自分で主体的に挑戦していけば、その分うまくいかなかったり、失敗したりします。
私がずっと思っているのは、 「失敗しないなんて、無理」 だということ。
失敗して「残念」と思うことこそ残念で、失敗からどう学ぶか、次にどう生かすか、その発想を自分のものにしてほしいです。
そう考えると、子どもたちにそんな姿勢を学んでもらうだけではなく、私たち大人も「やりたいことを応援する」基盤や環境を今から作っていく責任を感じます。
実際に、大企業では社内起業を導入するなど「アントレプレナーシップがないと組織が続かない」と言われるケースが増えてきているんです。
私が「アントレプレナーシップ」に着目したのは実はたまたま。
私は、地元札幌にいたときから15年間、サッカーを続けてきました。
海外のチームのスカウトを受けるほど、「プロ選手」の夢が自分の目の前にありました。
当時20歳でしたが、サッカーと向き合い、独特の「直感」を大事にしていたからこそ、ふと冷静に思ったことがあったんです。
「実力的にずっとプロ選手を続けていくのは無理だな」。
当時からスポーツ選手のセカンドキャリアが課題になっていたこともあって、自分も困りそうだなと思ったんですよね。
そうして、プロサッカー選手への道へ進むことをすっぱりと辞めました。
「やりたいことを見つけたい」。
これまで情熱を注いできたサッカーと同じ熱量をぶつけられる「何か」を探し始めました。
それからは、大学時代暮らしていた関東地方で、様々な「大人」に会いに行きました。
でも、「やりたい」答えは見つからなかった。
就職活動もやってみましたが、一日で辞めました。
面接で合格する「テクニック」を見られているようで「未来に役に立つのかな」と思ってしまったからです。
結局もう一度向き合ったのが自分自身。
自分は何かに挑戦していくことが好きで、サッカーでプロを目指すほど挑戦できたのは「環境」があったからだと思い至りました。
今度は自分が、「何かやりたい、挑戦したい」と思っている人にその環境を提供できる人になりたいと思いました。
何かを行動することで視野が広がり、また新たにやりたい何かに挑戦していける。
そういった物事のとらえ方を伝えていくことが、結果的に「アントレプレナーシップ」だったんだと思っています。
あのときの私と同じように、挑戦したいという熱い思いをぶつけるところがなくて困っている若者の共通点は、 「社会との接点が少ないこと」 にあります。
小学生であっても、もっと社会とのつながりをもてればいいのに。
例えば、サッカーが好きで、サッカーを仕事にしたいと思ったとします。
そうすると、選手だけではなくて、実はサッカーに関わる仕事って無限にあるんです。
指導者、トレーナー、クラブの経営もそうですし、スタジアムの管理だってそうです。
実況解説、記者、カメラマン、サッカー用品を売る仕事も。
選択肢って実はたくさんあります。
でも、社会に触れて情報が入ってこないと見えてこないんです。
だからこそ「アントレクエスト」で、まずは 社会って、事業ってなんか面白いんだよ って伝えたい。
「こんなことをやりたい」とビジョンを描いたら、色んな方法が広がっていくんだってワクワクしてもらうのが役割だと考えています。
そうして選択肢が広がっていくと、また自分のやりたいことがきっと見つかっていく。
それは、きっとどんな職業でも、どんな学生生活でも、自分の「軸」になるはずです。
私は大学から地元を出て起業しましたが、故郷に何か還元できたらいいなとずっと思ってきました。
今回、「アントレクエスト」を地元・札幌で開催できてうれしく思ったのは、子どもたちにとてもやる気が感じられたことです。
積極的で前のめり。将来性があるなと。
北海道は広いし、「何かやりたい」と思う人たちにとって、伸びしろと可能性が大きい場所だと、道外に出たからこそ感じています。
でも一方で、まだまだコミュニティがせまいし、選択肢も少ない。
だから、子どもたちには色んな挑戦・体験をして視野を広げながらも、「北海道らしさって何だろう」って考えながら、やれることを自分で作っていってほしいです。
そんな挑戦するプレーヤーが生まれる環境をこれからも作り続けていきたいと思います。
何かをやりたいと思ったとき、「大人」はリスクを伝えがちです。
起業もそう。芸術の道や、今だとYoutuberなども「不安定だ」などと言われやすいですよね。
だけど、決めるのはあくまで自分自身。
一番言いたいのは 「後悔しない挑戦をしてほしい」 ということです。
そのために、たくさんの体験と情報収集をして目いっぱい自分の視野を広げてわくわくしてほしい。
アントレプレナーシップはその礎になるはずです。
***
聞き手・文|Sitakke編集部あい
Sponsored by北海道大学・地域協働推進機構
■「上司ガチャ」を大胆改革!部下が上司を選ぶ会社 選ばれなかった上司はどうなるの?【札幌】