2023.08.26
出かけるは虫類から学ぶ、いのちの授業です。
連載「じぶんごとニュース」
家族連れに人気の小さな動物園が、札幌市手稲区にあります。
去年11月に開館した、見て触れて学べるは虫類動物園「北のレプ舎」です。
館長の武藤卓也さんは、自宅でワニを飼育する無類の「は虫類」好きです。
は虫類の魅力を尋ねると…
「このつぶらな瞳でしょうかね。かわいくないでしょうか?どうでしょうか?」
北のレプ舎は、ただ、は虫類と触れ合える動物園ではありません。
展示する動物の半数は、捨てられるなどした「保護動物」です。
この「ケヅメリクガメ」は札幌市の企業が飼育していましたが、大きくなりすぎて育てられなくなり、保護されました。
3歳ですが、重さはすでに13キロあります。
特定外来生物に指定されている北米原産のカミツキガメは、甲羅が50センチまで成長します。
かみつく力が非常に強く危険なため、捨てる飼い主が全国で相次ぎ問題になっています。
このカミツキガメは、去年、札幌市北区の住宅街でダンボールに入れられた状態で見つかりました。
最も保護依頼が多いカメが「ミシシッピアカミミガメ」です。
縁日でおなじみだった、カメすくいのあの小さなミドリガメです。
武藤館長は、「これはすべて今年保護した個体です。北海道ではもともとカメは生息していないので、北海道にカメがいた場合はすべて外来種、もしくは国内外来種。夏になると野に放たれたカメが活発になるので保護依頼が増える」と話します。
「ミシシッピアカミミガメ」の寿命は、飼育環境下では50年以上、甲羅はおよそ30センチまで大きくなるため飼育放棄が絶えません。
条件付き特定外来生物に指定され、今年6月から輸入や放流を禁止する国の規制が始まりました。
飼い主だった独り暮らしの高齢者が亡くなって行き場を失ったり、札幌市内の住宅街を歩いていたところを発見されるなどして、自治体や警察から保護の依頼があったものです。
武藤館長は、「コロナ禍で、イヌやネコほど手のかからない、家の中で飼える、散歩もいらない、世話も少なくていい、は虫類が注目されている。その中で、『飼ったはいいけどもイメージと違った』だとか、『予想以上に大きくなって飼いきれなくなった』は虫類が当館に寄せられている」と話します。
2020年に、は虫類保護団体「北のワニ舎」を設立した武藤館長。
飼育放棄されたは虫類を保護する活動を始め、これまでに100匹を超えるカメを保護してきました。
飼い主の無責任な飼育放棄をなくそうと、武藤さんが力を入れているのが、小中学生を対象とした「1日飼育員さん体験」です。
エサ作り、エサやり、ケースの清掃など、は虫類の世話をしながら飼育の大変さを体験し、生態系や生物多様性、そして命の大切さを学ぶプログラムです。
武藤館長は、「今日やったことを必ず思い出して、大変だった思いをちゃんとできるかどうか判断して生き物を飼ってください」と語りかけていました。
参加した小学生は、
「ごはん作りが楽しかった」
「(飼育放棄は)人間が悪いと思うし、だからこそ人間ができることをやらなければいけないと思います」
「命は大切だから大事にしようと思った」
と話していました。
武藤館長は、「は虫類といっても、10年生きるものから100年生きるものまでいる。ただかわいい、飼ってみたいだけで飼育すると、こんなに長生きするとは思わなかったということで、手放してしまう人も多いので、飼う前に必ず勉強してほしい。我々のような、は虫類の保護団体がなくなるような未来を目指している」と話していました。
「北のレプ舎」では、一部の保護カメについては譲渡も行っています。
ただし、飼育できる環境にあるかなど条件があります。
小中学生が対象の「一日飼育員さん体験」は1人1300円。
予約制で、夏休み以降も定休日以外は行っています。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部IKU
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年8月18日)の情報に基づきます。
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