2023.08.24

暮らす

「出産で辞めた例がない」「髪色やネイルも自由」さっぽろの老舗IT企業の社長がつくる、理想の職場とは【ITで、もっと私らしく vol.3】

“私らしい暮らし”を実現するための選択肢として 「IT」業界の可能性に注目。多様なロールモデルを、札幌のIT業界で働く人々の取材を通して探っていく連載【ITで、もっと私らしく】

前回⇒経営コンサルタント志望だった彼女が「DXアドバイザー」になって、叶えたい夢

第3回目は、「出産で辞めた例がない」「髪色やネイルも自由」「未経験からの挑戦も大歓迎」 など、“私らしく”働ける環境づくりに奮闘し続けている企業のお二人に登場いただきます。
札幌に拠点を持ち、全国規模の大型システムを開発している企業・SOC株式会社。代表取締役社長の朝倉由紀子さんと開発部部長の安齋佳良子さんにお話をうかがいます。

SOC株式会社
1978年創業のソフトウェア開発会社で、北海道のIT企業における草分け的存在。電話会社、プロバイダー、テレビ局、電力会社を中心に、各業界で業務に必要とされるシステムを開発し、全国規模で世の中を支える、縁の下の力持ち的役割を担う。札幌本社のほか、東京と福島に支社。社員数319名(2023年7月現在)。詳細は公式HPにて。

「みんなに気持ちよく働いてほしいんです」

左:代表取締役社長 朝倉由紀子さん 右:開発部部長 安齋佳良子さん

子育て世代、障がい者、多国籍など、さまざまな働き方をサポート

—「多様なライフスタイル、多様なライフステージに」。企業サイトのキャッチコピーが印象的ですね。

<朝倉社長>やる気がある方なら誰でもチャレンジできる会社、せっかく繋がったご縁を大事にする、社員みんなが笑顔でいられて、ずっと働きたいと思える会社にしたいんです。

社員の4割は文系出身ですし、子育てと両立している社員も多くいます。障がいを持つ社員、外国籍の社員もいます。それぞれが働きやすい環境になるよう、要望も取り入れながら何ができるか、日々試行錯誤しています。

—例えば、子育てとの両立についてはどのようなサポートを?

<朝倉社長>法律で義務付けられているのはお子さんが3歳になるまでの時短勤務ですが、弊社では小学3年まで認めています。実際に現在、6名が時短勤務をしています。

<安齋部長>産休・育休制度も当然あって、こちらも女性・男性問わず活用していますね。私が入社して18年経ちますが、妊娠や出産を機に退職した同僚って思い浮かばない。子育てと両立しながら働くことが当たり前になっています。

<朝倉社長>希望者にはテレワークも認めています。導入したのはコロナ禍より前で、「育児の都合で在宅勤務にさせてほしい」という男性社員の要望を受けてでした。

<安齋部長>家族の介護のために活用する社員もいますよね。

<朝倉社長>ほかにも、ご家族と過ごしたり、趣味を楽しんだりといった時間も大切にしてほしいとの思いから、NO残業の方針を貫いています。

<安齋部長>昔は業界全体がド根性で働くのが当たり前という考えがあったように思います。でも、朝倉由紀子社長が私たち管理職に働きやすい環境づくりの重要性を説き、「残業しないために何をするか」と問いかけてくれて。そこから業務の効率化を徹底したり、就業時間を知らせる音楽を流したりと意識づけをしていくうちに残業が徐々に減って、数ヶ月続けたら、みんな定時の17時45分になると自然に退勤するようになりました。自分も含め、やればできるものなんだなあ、と思いましたね。

【編集部ナベ子のつぶやき①】
取材当日も、17時45分になると続々と退勤する社員の姿を見かけた。“NO残業”を掲げる企業は多いものの、実際にここまで徹底している会社というのはちょっと驚きだ。

「カッコよくて面白そう」と未経験から転職し、部長までキャリアアップ

—エンジニア職で、開発部長を務めている安齋さん。入社のきっかけはなんですか?

<安齋部長>大学卒業してコールセンターに就職したのですが、当時の会社で使っていたのが顧客管理システム。そこでエンドユーザーとしてシステムの刷新を経験したんです。

そのときにシステム開発に興味を持ち「システムをつくる仕事って面白そうだし、“システムエンジニア”という肩書きもカッコいい!」と思ったのがきっかけです。さっそく「未経験者OK」の求人を出していた弊社に転職しました。

数週間新人研修を受けた後に開発プロジェクトチームに配属され、先輩に教えてもらいながら覚えていって……今に至ります。現在でも、未経験の方には、開発現場に出る前に2ヶ月間しっかり研修しています。

—実際、エンジニアの仕事はどうでしたか?

<安齋部長>すごく面白みを感じられています。知れば知るほど新しいことができるようになるのがワクワクしますね。
一番感動するのは、お客様が喜んでいる様子を見られた時ですね。自分たちが開発したシステムは確かに誰かの役に立つんだと実感できると嬉しい、そういう声は、同僚からも聞きます。お客様の会社に出向いて、自分のシステムが運用されているのを見て、お困りごとやご要望をお聞きして、「こうしてみましたがいかがでしょう」と改善したものが、「すごく使いやすいです!ありがとうございます!」といただけるのが、やっていてよかったなと思える瞬間です。

写真・奥が安齋部長。

<安齋部長>いろいろな業界に関われるのも面白いです。それぞれのプロジェクトはおよそ1年。プロジェクトが終了すればお客様も業界も変わることが多いのですが、各業界の世界をちょっとずつですが覗けるのが楽しいなと感じます。
チームで取り組むというのも魅力です。特にそれを実感した出来事がありまして、ちょうど私が部長に昇進した直後に納品した業務システムが、運用しはじめたら想定外の動きをして大問題になったんです。

大至急の修復が必要になり、チーム総出で必死に対応しました。良い思い出ではないですし、2度と経験したくないですが、みんなでピンチを乗り切ったことで、団結感や仲間がいる心強さを実感することができました。
このときのように、徹夜で必死に対応するようなことも、まれにあります。でも、そこはメリハリをもって仕事ができる環境なので、長く続けていられるんだと思いますね。

「私らしく」働ける職場を

<朝倉社長>会社説明会などで、よく聞かれることは「育児休暇について」ですね。弊社の産休・育休制度の実績としては、先に述べたとおりです。
学生さんからは、服装について質問されることが多いですね。弊社では制服はなく、オフィスカジュアルと言える、人に不快感を与えない範囲で自由に好きな服を着ています

<安齋部長>髪の色も自由で、シルバーや紫、赤のインナーカラーを入れている社員もいます。最初見た時、流行っていると知らなくて「あれ白髪生えてる?」ってビックリしちゃいました(笑)

<朝倉社長>ネイルも好きなようにして大丈夫です。私も好きで、ママ友のネイリストさんにしてもらっています。好きなファッションでいる方が、仕事のモチベーションも上がりますよね。

「ママ友のネイリストさんがやってくれたんです」と、嬉しそうに話す朝倉社長。たしかに仕事中も気分がアがりそう!

【編集部・ナベ子のつぶやき②】余談だが、朝倉社長の経歴も面白い。新卒の頃に、創業者である父の会社である「SOC」の入社試験を受けたところ、なんと落ちてしまった(!)のだとか。その後、銀行に勤務し、仕事がおもしろくなってきた頃、当時社長の父から「仕事を手伝ってほしい」とのオファーが。入社後、経営をゼロから学ぶために、大学院に通ってMBAを取得し、現在に至るそう。「日々、勉強です」と話す朝倉社長の笑顔が印象的だった!

—最後に、IT業界へのチャレンジに興味がある読者の皆さんにアドバイスをお願いします!

<朝倉社長>無料または安価で学習できるWebサイトなどがありますので、向いているかどうかを確かめるために、試しに触ってみてください。そこでもっと「知りたい」「やってみたい」となれば、ぜひIT業界にチャレンジしてみてほしいですね。

<安齋部長>私も、まずは気軽に手を付けてみることをお勧めします。大事なのは「おもしろそうかも?」という好奇心と、「がんばってみようかな」というエネルギーが湧いてくるどうか。私みたいに「なんかカッコいいかも!」ということがきっかけでも全然アリだと思います。

<朝倉社長>育児等のためにリタイアしてしまった方、未経験でもやる気たっぷりの方、たくさんの方がチャレンジしてくださることを心からお待ちしております。

取材中は終始朗らかなムード。社長と社員の“近い距離感”も、魅力のひとつだと感じた。

***
次回は、時短勤務やテレワークなどを活用し、3人のお子さんを育てながら開発業務に従事しているママさんエンジニアにお話をうかがいます。

共同企画:一般財団法人さっぽろ産業振興財団

文: にの瀬
編集:ナベ子(Sitakke編集部)
取材日:2023年7月

Sitakke編集部

Sitakke編集部やパートナークリエイターによる独自記事をお届け。日常生活のお役立ち情報から、ホッと一息つきたいときのコラム記事など、北海道の女性の暮らしにそっと寄り添う情報をお届けできたらと思っています。

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