2023.08.26

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【函館】「今後何をするのか」いま一番気になる建物。凸版印刷との連携をオフィスから解き明かす

ICT KŌBŌ® HAKODATE 大町

今年5月、メディアで報じられた印刷大手・凸版印刷株式会社と函館市の包括連携協定締結のニュース。奇しくも、まだ就任間もない大泉潤新市長の弟で俳優の大泉洋が、凸版印刷のイメージキャラクターとしてCMに出演していることから、そのニュースのタイムリー性や偶発的な巡り合わせに話題が集まった。

しかし、その包括連携協定が何を目的としているのか、また凸版印刷が新たに構えたというサテライトオフィスについて具体的に把握している人の数はいまのところ未知数だ。

そこで、ここではそのオフィスとなる建物の紹介をしながら「そこで何が行われるのか」を解き明かしていきたい。

まずその建物だが、選ばれたのは大町にあった1913(大正2)年建築の旧加藤家住宅。大正期におけるベーシックな和洋折衷様式の建物で、1951(昭和26)年からは大洋漁業(現マルハニチロ)が事務所として使用し、その後は住居として数年前まで使われてきた。

ここに白羽の矢を立てたのが、西部地区にある函館らしい建物を再生させる等、この地区の再整備を担う第3セクター『はこだて西部まちづくRe-Design』。

そして設計を担当したのが、旧函館西警察署から函館臨海研究所への再生など、これまで多くの歴史的建造物の再生を担ってきた建築企画山内事務所だ。
「こういう建物を再生する場合、どの時代をベースにするかを考えるんですが、今回の場合は市民の方々が長年見慣れた姿を維持することを前提に進めました」

リノベーション前の旧加藤家住宅(大町・2019年撮影)。かわいらしい外観、淡いブルーと白のコントラストが特徴的。

旧加藤家住宅の特徴は、2階に見られる2連層の縦長窓が3つ並んだ部分。
山内さんによれば、これは大正期としては新しいデザインで職人の工夫が随所に見られる箇所だという。
そして淡くやわらかいブルーの外壁色もこの建物の象徴だった。

外観についてはこの2点を極力元の姿に戻した上で、壁の内側に基礎、柱、梁などの新たな構造体をすべて入れ込み、耐震補強と断熱をクリアするつくりになっている。

建物内部には建造当初の柱や戸、さらに貴重な型版硝子などを随所に盛り込み、現代的な機能を兼ね備えたオフィスとの調和をはかった。

建造当初の部材を随所に活かした内部は、デジタルオフィスとの不思議な調和を見せる。

さてこのオフィスだが、『ICT KŌBŌ® HAKODATE(アイシーティー コーボー ハコダテ)』と名付けられたシステム開発拠点となる。

凸版印刷では数年前からこの次世代DX開発拠点を全国各地に配置し、地域の環境を活かした多様な働き方の実現や雇用の拡大、地域の自治体や企業と連携・交流して新事業を創出すること等を目的としている。
つまりデジタル技術を活用して、社会やビジネス、人々の暮らしをより良いものへと変革することを目指す場所だ。

すでに長野県飯綱町に構えたオフィスでは、地元のりんご農家が抱える課題解決に向けた新規ソリューション開発や、高齢化による買い物弱者問題を解決するため自治体と連携してシステム開発を進めるなど、地域に密着した開発を次々と進めている。

言わずもがな、函館にも地域課題は山積している。前述した函館市との包括連携協定は、ここで生まれた技術やアイデアをシステムに落とし込み、函館が抱えるさまざまな課題の解決に向けて活かすことも含まれる。

果たしてここからどんなものが生まれるのか、注目していきたい。

現在、函館のオフィスには堀田瑞穂さん(右)と大原裕紀さん(左)の2名が常駐。

ICT KŌBŌ® HAKODATE
函館市大町8-21
0138-86-6086

***
『peeps hakodate』vol,116・「きになるたてもの、すてきなおうち」より

peeps hakodate

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