「この時期、もっとも危険性が増す」と言われる生物です。
「週明けは駆除依頼がとても多い」と話すのは北海道防疫サービスの職員。
それが、スズメバチの巣の駆除依頼です。
今年は、多く発生しているのだといいます。
北海道ペストコントロール協会の会長でもある、北海道防疫サービスの藤村忠明さんによると、「今年は相談件数でみると、6月の集計で去年の1.5倍くらい」。
「5月・6月の気温が高く、天候が良かった」ことが要因だといいます。
今の時期が、安全に駆除できるラストチャンスです。
注意点も合わせて聞きました。
連載「じぶんごとニュース」
「目の高さにハチの巣ができた」と依頼があったのは、札幌市北区の住宅です。
巣は、住宅の玄関前に建つ物置の軒下にありました。
親指の爪ほどの小さな巣ですが油断は禁物。これから大きくなるのだといいます。
また、いわゆる「スズメバチ」とはちょっと違うのだといいます。
その特徴について、北海道立衛生研究所感染症センターの伊東拓也さんに教えてもらうと…
「コアシナガバチですね。結構普通にいるハチなんですけど、札幌市内にいるハチで、スズメバチよりはずっと大人しい」とのこと。
一方で、注意も必要です。
「庭の目立つ所に巣をつくる。間違って巣に触っちゃうと、チクチクチクとやられちゃうので気を付けた方が良いと思います」
今は小さい巣も、最大で握りこぶし大まで大きくなり、ハチの数も数十匹に膨れ上がります。
巣ができたのは、頻繁に人が通る住宅の入口…。
駆除することを決め、巣を改めて確認すると、卵が16個。
女王バチの駆除も確認し作業終了です。
一方、札幌市南区の閑静な住宅街。
依頼者は「ハチが何十匹も出てきた」と話します。
駆除を担当するHokkaiサービスでは、今年すでに70件の巣の駆除を手掛けています。
依頼者によると、ウッドデッキの下から枯れた枝を入れたビニール袋を取り出したところ、中から無数の大きなハチが飛び出してきたのだといいます。
住人は、あわててブルーシートをかぶせ、駆除を依頼しました。
確認すると…スズメバチが。防護服に着替え、慎重に作業を進めます。
ビニール袋の中にいた虫の正体は「ケブカスズメバチ」でした。
スズメバチの中では北海道で一番駆除件数が多く、都市の中まで進出している種類。
しかも「気が荒い」のだといいます。
北海道立衛生研究所感染症センターの伊東さんによると、「毎年スズメバチに刺されて亡くなったり、倒れたりする事故があるが、北海道ではほとんどがこのケブカスズメバチによるもの」ということで、早めの駆除をオススメしています。
ケブカスズメバチの巣は秋にかけて、最大で50センチから60センチまで巨大化します。
ハチの数も激増するため、住宅にできた場合は駆除するしかありません。
巣の出入口から殺虫剤をゆっくり注入すると、まもなくハチの動きが鈍くなりました。
働きバチより一回り大きいこの女王バチがいた巣には、サナギが72個、幼虫が75匹確認できました。
このサナギや幼虫は働きバチになり、巣を大きくしながら、さらに多くのハチを育てます。
ハチが激増する直前だったのです。
住宅でスズメバチの巣が作られやすい場所があります。
「雨風をさけられる軒下」、「換気口」が最も多く、ほかにも、「床下の通気口」や「立ち木」など、定期的に確認することが必要だと話します。
北海道立衛生研究所感染症センターの伊東さんは「スズメバチは肉食性で、害虫・農業害虫の幼虫を食べたりするので、そういう点では人にとって益虫でもある。注意しながら共存するのがベスト」だと話していました。
札幌市に寄せられたハチに関わる相談件数は下記のようになっています。
2018年:2954件
2019年:1173件
2020年:1298件
2021年:1650件
2022年:1548件
ここ数年はほぼ横ばいですが、見方を変えれば毎年、コンスタントに相談が寄せられているともいえます。
道内で、野外の危険生物というとクマが浮かびますが、死亡件数でいうと、スズメバチもかなり危険です。
全国で毎年15人前後が亡くなっています。
特に多いのが巣に近づいて刺されるケースですが、刺されてしまった場合、最も怖いのが「アナフィラキシーショック」。
ハチが持っている毒に対するアレルギー反応の一種で、呼吸困難、血圧低下を引き起こす、重篤な場合、死に至ります。
過去に刺され、抗体があると2度目以降ショックを起こす可能性があります。
中には10回刺され、11回目に初めてショックを起こした事例もあるんです!
刺された人の10~20%にアナフィラキシー反応が起き、うち数%が重症化するとされています。
もし刺されてしまった場合の対処法も覚えておきましょう。
まずはとにかくすぐに病院へ行くこと。
1人にならず、携帯につながる場所にいったり、近所にかけこんだりして誰かに伝えて、病院に行くようにしてください。
そしてスズメバチの毒は水に溶けやすい性質があります。
刺されたらすぐに水で患部をよく洗うことが効果的です。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2023年7月31日)の情報に基づきます。
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連載「じぶんごとニュース」