帯広市西1南9にある衣料品店の2階に今年3月、「炭焼き梅酒房 甘味処 鶯(うぐいす)」がオープンした。梅酒をこよなく愛する店長の我妻拓見さん(26)が集めた100種類以上の梅酒を楽しめる居酒屋だ。
食事メニューは炭火で焼いた串焼きが中心で、「特にレバーやハツ、砂肝など生で仕入れている内臓系がおすすめ」。他にも我妻さんがホームセンターでひらめいた、「カキのやかん焼き」もイチオシの一品だ。やかんにたまったカキのだしを締めのご飯にかける食べ方が、カキ好きをうならせる。
店にはパティシエもおり、本格的なスイーツが味わえる。店の看板である梅酒を使ったガトーショコラなど5種類のケーキをそろえ、人気メニューはラム酒のティラミスだ。午後11時からはバーメニューとなり、パフェも提供する。
店の売りは100種類を超える梅酒で、九州から北海道まで全国各地の梅酒を取り寄せている。甘くてとろみのある品から、甘みはなく塩気のある品まで味のバリエーションも豊富だ。メニューには味わいや口当たりなどが詳細に記され、好みの一杯を探すことができる。
おすすめは、山形県の水戸部酒造が作る日本酒ベースの「山形正宗とろとろ梅酒」。しっかりとした梅の風味とほのかな酸味を残しつつ、とろりとした濃厚な甘みが口の中に広がる。我妻さんを梅酒のとりこにした一杯だ。
元から梅酒を好んでいたわけではなかった。ある日訪れた帯広市内の日本酒居酒屋で、メニューの“今月の梅酒”として出ていたこの酒が気になり頼んだことで、梅酒の世界に迷い込んだ。「今まで飲んできた梅酒とは全然違った。言葉にできないほど感動した」と目を丸くする。
帯広出身で、専門学校を出たあと札幌の広告会社でデザインを担当した。想像を超える忙しさの中で3年近く勤めたが、過酷な業務に精神をすり減らし、当てもないまま会社を辞めた。帯広に戻り、勤めたのは居酒屋。「好きな料理をやりたい」との気持ちがあった。
約5年間、居酒屋で働き、「いつかは自分で店をやりたい」と考えるようになっていた。そんなとき、中小企業等の新分野展開などを支援する事業再構築補助金の存在を知り、母のすすめで母が営む会社から申請、採択された。
「いつかは自分の店を持ちたいとは言っていたが、こんなに早いとは」。26歳の若さで店を任されることに不安はぬぐえず、「店を開く直前まで、本当にやっていけるのかと思っていた」という。約半年間の準備を経て、3月21日に開店にこぎ着けた。
開店してからすぐは客足が伸びなかったが、新聞やフリーマガジンに掲載されたことで、特に梅酒を求めて来店する女性客が増え、週末は予約でいっぱいだ。「平日とバータイムにも来てほしいから」と、平日限定の梅酒飲み放題企画も検討している。
これからの目標は「梅酒を150種類そろえること」。現在、札幌に150種類の梅酒を提供するバーがあるといい、「これからも増やし続けて、北海道ナンバーワンを目指したい」と意気込んだ。
我妻さんの人生を変えた一杯を飲みに、100種類の梅酒が並ぶ居酒屋を訪ねてみては?
1997年帯広市生まれ。稲田小、南町中、帯広北高卒。2023年3月21日に店をオープン。9時間の営業と串の仕込みで、寝る時間以外はほぼ店で過ごす。週に1度の定休日は、満足するまで寝だめする26歳。
帯広市西1南9-12(2F)、18時~翌3時(23時以降はバータイム)、日曜定休、電話0155・26・3314。インスタグラム@ uguisu_izakayaで、梅酒を紹介している。
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