イタリア発祥のデザートの総称として使われる「ドルチェ」という単語。その意味すら浸透していなかった1990年代後半に、イタリアンドルチェを中心に据えて誕生したのがこの店だ。
オーナーシェフの大桐幸介さんは26歳のときに単身イタリアに渡り、ミラノの老舗レストランやトリノ北部の田舎町の洋菓子店などで修業を重ねた。1991年に帰国し、函館西武の中にあった洋菓子店に5年勤務したのち、花園町に自身の小さな店をひらいた。
「最初からイタリア菓子にこだわっていたわけではなかったんです」と語る大桐さん。おそらく開業当初、地元の各メディアで「イタリアが修業の地」という自身のルーツとともに繰り返し取り上げられるうちに、チッチョ=イタリア菓子の店という路線がごく自然に固まったようだ。
26年前の開業から現在に至るまで、常に切らすことなくショーケースに並べているのが『桃のクレープ』。“桃クレ”の略称で親しまれ、店の名刺代わりとなった看板ドルチェだ。
生クリーム、カスタードクリーム、フランボワーズの実、そして桃をたっぷりのバターを含めて焼き上げたクレープ生地で包んだ一品。
ショーケースに並ぶ彩り鮮やかな他のドルチェに比べてひときわ地味でシンプルなルックスが、逆に独特の存在感を放つ。
函館市石川町316-5
0138-34-7020
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『peeps hakodate』vol,115・「90年代に生まれたあの店のロングセラー。」より
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